ち
存在価値
土岡さん 実際にはですね、雪印の存在価値は否定されたと・・・お客様は当時3つだったんですよ。見たくない、聞きたくない、知りたくない。もう、もっとも、買わない。経営者は企業体の存続で手がいっぱいなんですよ。当時もう、壊れてるから。社員も会社も救わなければいけない時、例えば、どこと組んでどこに金融支援貰おうかっていうことにしか、もう、いけないんですよね、それ当然の話なんですけど。結局だから、存在価値だとかお客様が言ってる企業体質を誰がどうしていくんだというところに誰もいかないんですよ。いけないんですよね、そういう状態だから。それで雪印のマークが世の中から消える。みんなで話し合ったのが、自分たちの仕事の役割を超えてできることはなんかないのかっていうのが、その、夜中寝ないでずっとやっている。
これは後付けに近いんですけども、赤いほうがですね、お客様から嫌いと言われている項目なんです。一番大きいのは、経営者です。それから、会社の体質です。それから、社員だけはですね、かすかに、お客様から残ってるんですよ。まだ社員は少しは望みがあるんじゃない?っていうぐらいよりは、社員はかわいそうっていうことがあったんです。それで我々がじゃあ、自分たちの、自主的な社員のスタートをするしかないと。で、今例えばこの時点で経営者がですね、いくらかっこいいこと言ってもお客様からこれだけ否定されてる経営者の声は聞かないですよね、お客様は。聞こうとしないし、「また何バカなこと言ってるの?」っていう、たぶんもうそれで終わるだろう。だから、社員から出発して自分たちがやるしかないっていうのが、スタートですよ。で、稲葉なんかと最初はですね、どうしていくのか、まぁ鹿毛(かげ)という男がいてね、この男がまた素晴らしいセンスもあるけど激しいんですよ、過激っていうくらいの・・・
---(笑い)
土岡さん NHKのテレビご覧になったら鹿毛ってのが映ってますけど、あの、彼はずうっとメッセージを作っていく中に、「雪印のDNAを入れ替える会」を作ろうっていう、それがね、最初なんですよ。「体質を変革する会」っていうふうになってますけど、最初は「DNAを入れ替える会」だったんです。「DNAってなんなの?」っていうと、雪印乳業って最初からお客様が言われる、そんな悪い会社だったのかと。私も20何年会社勤めてるから、自分の体質ってわかんないんですよ。生活習慣病みたいにじわじわきてる。で、会社も77年ですから、企業30年周期説がある時に、77年生きてるわけですよね。だからわかってないんですよ。
まぁ、例えば「あなたの体質とか性格って何?」って聞かれたら、即座に答えられる人って少ないと思うんですけど、それをもって「会社って何?」ってなると、わかんないですよね。で、行き着いたのが、創業者の精神なんです。あの、日経新聞に「私の履歴書」っていうのがありますよね。あれを日経新聞さんと交渉して、全部本にまとめたのを印刷したんですね。あれ、著作権があるから。で、社員に「読みたい人、全員読みなさい」ってダァーっと配っていくんですよ。で、我々が一番感動したのが・・・
稲葉さん うん、そうですね。
土岡さん ちょっとその話をして下さい。
稲葉さん いやあ、もう、その辺の部分がホントに昔からどうだったのかっていうね、言われているところが、やっぱり読んでみると、こう、真正直にやっているわけですよ。何もこう、牛が乳を出すという状況しかない中で、それをお客様にまず届けるというところから始まって、で、牛乳が今度余ったと。で、その時に例えば今回の雪印食品の牛肉偽装事件っていうのは、牛肉が余った・・・だからラベルを貼り替えて、お客様を騙してしまおうって構図でしょ。それに対して雪印乳業は過去、牛乳が余った時に何をしたかというと、やっぱり牛乳をもっと日付の長いバターに変えて、きちっと持つようにして、それを今度、お客様に配っていくというような形でどんどん、こう、イノベーションというか商品を開発しながら、もう、真正直にどんどん作っていく。で、当然、もっともっと上がってくれば、チーズに変えたり、チーズをいろんな形にしたりっていうことで、少しでも食卓に広がるように、こう、真正直に全部やってってるっていうところがね、それを今まで我々、そういうこときちっと理解していなかった。もう、それ以外にも、もう、(創業者は)すごい人だったんですけどね。
と←此方 ち 彼方→り
|