雪印

劇変する雪印
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原因不明
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対策
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土下座広告の反応
使命と役割の違い
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私は命を作ってる
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これからの雪印を見てもらうしかない

キーワードと
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ものづくりの原点とは?

会社はひとつであるべき

生活の一部というよりも、自分の人生の思い出のページ


 
雪印乳業 土岡英明+稲葉聡 



私は命を作ってる

土岡さん それからこの「生産者の対話会」ってこれ、あの、全国で75人ぐらいの社員が10ヶ所ぐらいでやっていくんですけど、「ものづくりの原点って何?」っていう話をしていくんですよ。切り花農家の方とか酪農家の方とか米を作ってる人、全部一緒です。で、その人たちを社員がガーっとやって(回って)やるんですけど、最初ホント怒られましたよね。みんなもじもじしてるし。明快な答えはないし。

 すごいなあと思ったのが、お米作ってる農家のおばちゃんから「私、米は作ってない」って言われたですよ。何?どうしたのかなって思ってたら、「私は命を作ってる」って。「命を作って届けてるのが私の仕事だ」って言われて。「使命だ」なんて、カッコいいこと言わないですよ。だから、それ、重くてですね、で、酪農家の人が私に「牛飼いです。牛飼いは人の健康と牛の健康しか考えてなきゃいいって、私、昔から言われてきてるので、今それしかやってない」。もう、社員は頭垂れるわけです。で、工業製品を作ってたのかもしれないねっていう言葉が、社員から出てくるんですよね。生き物を扱って、生き物から・・・自然のものですよね、夏冬、全然乳量も違うし、乳質も違うし、それを単純に言えば牛から貰ってたんですよね。

 だから、ものづくりの原点とはいったいなんだったってことに、だんだん社員も議論していくんですよ。終わってもう1回社員集めてやるんですよね、どうだった、ああだったって。それからあとは・・・お客様モニター・・・すみません、長々喋っちゃってるから、もう、この辺にします。最後、結論だけ言います。お客様モニターの時にもやりました。今までの活動、全部合わせて、出てきた声を集約して、雪印乳業としてもう1回、お客様にお約束をしたいというふうに作ったのが、3つの改革っていうことで・・・そのパンフレットに載ってるヤツです。

 答えはひとつですね。「透明でわかりやすくて本気の改革をする」っていうだけです。

 内容的には、ごく単純です。お客様が言ってるのがですね、問題点とか書いてますから後で見ていただければいいんですけど、一番はここですね・・・企業の価値と使命とミッションが見えてない。それがはっきりしてない会社じゃないのか。あと、何やってるかよくわかってない。これ、伝えてないってことです。それから全社的な動きが見えない。あの、言ったように工場ってあるんですよ・・・A工場は、カリスマ工場長とリーダーシップがあって、すごくここは整っているけど、B工場はちょっと劣ってるんですよ、工場長。(問題は)ここなんですよ、会社の中で。

 お客様にとっては会社ってひとつであるべきなんで、標準とパートの従業員さんまで全員がそのことわかってますかっていうのが、もう、ひとつです、これは。そのことをやり遂げなさいって言われてるっていうことですね。安全・安心に向き合う、お客様に向き合う、食の責任を認識するっていうこの3つを今、8つのテーマと・・・最終的にどうなるかわからないですけど、1月とそれから4月から制度・仕組みを、人事制度も含めて、今変えようとやってます。さっきの食の責任というのがですね、やっぱり自分たち、一番欠けてたんですよ。食品を扱ってるっていう意識っていうのが、こんなにすごいものだとは思わなかった。あの、母と子ふたりで過ごしておられる方が、あの、ま、貧乏でしたっていうお話なんですよ。お母さんが一生懸命働いて当時高かった・・・母乳出なかったんで、雪印の粉ミルクをずうっと与えてくれた、と。私、それで大きくなった。今元気です、で、その後、雪印商品ずっと買ってきて、あの事件が起こった時に、母親が自分に対してごめんねと言った。で、私は雪印、今でも買ってます。それはなぜか?母親を責めないために。裏切らないために。

 だから私たちは、雪印っていう食品がどれだけの生活の中に入り込んでいたかということを知らずに販売してるんですよ。シェアがトップだとか、売上高が世界ランキングなんぼだとかこと言ってた時代ありましたけど、食品ってそういうもんじゃないんだなってことが、よくわかったんですね。結局主婦の人が、愛憎もあるし、悩んでるし、なぜ手が出ないかっていうと、家計を預かっている、家族の健康を預かってるのは主婦の方なんですね。家族に万一のことがあっちゃいけないし、家族を幸せにできるのは主婦の方、すごい責任持ってるんで、その人たちに不安な商品与えるとか、やっぱりそれは食品会社にとしては絶対の使命だな・・・そういうことしちゃいけないっていうのが、このことを通じて我々は痛いほどわかりました。生活の一部というよりも、自分の人生の思い出のページなんですよ。あの時、僕はサッカーやってて、あの時、背がちびっこだったんだけど、雪印牛乳1日1リットル飲んで、180何センチに・・・そんな方、本当にいらっしゃるんですよ、目の前に。「僕はなんかあっても雪印買います」って仰ってるけど、実は複雑な思いで買っておられるんですよね。

 で、結論から言うと、まぁ私たちはこのことをやっていきたいって思ってるというのがひとつと、稲葉なんかとよく話すんですけど、今世の中いろいろこう・・・まぁ偉そうなこと言えないけど、発端作ったのは私たちだけど、一番大事なのは企業の使命ですね。理念と使命。最近、ミッションっていう本が流行ってますけども、マーケティングとかですね、ブランドとか言う前に、まず、理念だとか使命だとかミッションとかがきっちり語られてる会社と、それを従業員が理解して・・・ま、そういう仕組みになってないといけないですよ、それを理解して従業員が動いてる会社、そういう会社になりたい!と思いますね。

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