雪印

劇変する雪印
大阪食中毒事件の原因
原因不明
「再利用」をめぐる誤解
対策
ブランド崩壊は一瞬
7人、集まる
存在価値
創業の精神
体質が悪いって何?
土下座広告の反応
使命と役割の違い
顧客志向
私は命を作ってる
ブランドは、マーケティングでもなんでもない
情報公開のあり方
賛同者を増やすために
社長との付き合い方
夢を語ろう
ロイヤルユーザー
伝える努力
現在の危機管理体制
社会貢献のあり方
これからの雪印を見てもらうしかない

キーワードと
キーセンテンス

それで良しとしてきた。これは明らかに体質だ

大企業病

使命

役割

コンプライアンス

提案


 
雪印乳業 土岡英明+稲葉聡 



使命と役割の違い

土岡さん で、そこでお客様と受発信できるって、まぁね、ヤマダさんからもメールいただいたように、ああいう形をとって、とにかくありのまんま出していこうと。で、さっきの、じゃあ、どこから手をつけていけばいいか、企業体質が悪いって。ホントに自分たち、そう思ったかということになると、わからないんです。仮説なんです。特に明らかに言えることは、消費者不在であった。お客様に対する目線が弱かったっていうのは事実。それから内向きの論理で物事を決めてたんで、やっぱり世の中とのギャップを知らないまんまに、それで良しとしてきてた。これは明らかに体質だろうと。

 でも、それを一言で言うと、大企業病なんですよ。今、不祥事を起こしている企業、偉そうに言えないですけど、ほとんどそうですよ。あの、原因が。それで最初に4月と5月に全国の社員に呼びかけて、自主的な運動なんで、でも上司の許可取って下さい、で、工場の人も管理の人も自由に集まって下さいっていうふうに呼びかけをするんですよ。で、もちろん我々も今日決めて・・・今日こういうことをやるって決めるでしょ、その日のうちに新幹線かなんか、その日のうちに「じゃあ、あんたあっちに行って」ったら、もうビューッって行くんですよ。朝だったらみんな北海道行ったり、7人だったですよね・・・7人プラスひとりぐらい。とにかく自分たちひとりで回っていくんですよ、ダァーッと。で、説明をするんです、みんなに、こうだと。で、お客様のビデオを・・・ホントはいけないんですけど、ここだけの話ってことで、見てもらって、体感してもらって、企業体質っていったいなんだったんだってことを呼びかけるんですよね。

 でもそんなに、見事な反応はないです。「何言ってるんだ、こいつら」っていうのが、あるんですよね。で、行って、ダァーッと手分けしてって、もうほとんど、自分の業務できないですよね。それで4月・5月呼びかけたら、全部で60人ぐらいです・・・(それぞれの月で)30・30ですか、全国の社員来てくれて。課長もいれば、若手もいるし、女性もいるしっていろんな会ですけど、その時はまぁ、稲葉のほうが仕切ってるんですけど。その時になんにも我々、コーディネートできないんですよ。研修日じゃないし。で、2日間話し合って、いったいじゃあ、雪印って何が良くて何が悪かったんだろうっていうことから、単純に始まっていくんですよ。「雪印の七不思議を述べよ」とかってね。で、夜になると一杯飲んで交流会やるじゃないですか。ひとりひとつ今の思いを述べよって言ったらね、何人か泣いてるんですよね。泣きながら言う・・・今までの自分はこうだった、ああだったって。で、翌日になって、最後は、自分たちの働いてる使命だとか会社の使命をもう1回、見つけ直そうっていう決断になるんです。そこからそれで進んでいくんですけど、その時、牛肉偽装事件の話、ほら・・・使命役割っていう。

稲葉さん あの、使命役割の違いっていうことで、牛肉偽装事件の、あの、センターの方が、ホントは彼としては、在庫が増えちゃったんで、なんとか、こう、減らさなきゃいけない。これはひとつの彼の役割だったんじゃないかと。ただ本当の彼の使命というのは、やっぱり一番新鮮なお肉をお客様にきちっとお届けする。お客様にお届けするっていうのが、本来の彼の仕事・・・使命だったろうというようなことで、彼は使命役割っていうことを間違えたっていうか、間違えてしまってそういうふうになっちゃったんじゃないかと。だから我々の仕事の中にはやっぱり使命役割っていうものが(あって)、よく考えておかないと、大きな間違いを犯す。「どっち?」って言ったら、まず、使命を取らなければいけない。まぁそういう話ですね。

土岡さん だからコンプライアンスのルールさえ作れば、人は犯罪起こさないかといったら、そういうのは、もう、基本の基本であって、「ハンカチ持ってますか?」「爪切ってますか?」っていうのと同じですよね。人のものを盗んじゃいけないっていうのは、誰でもわかってる話なんで、それがなぜそういうふうになってしまうのかっていうところが、ルールブックとかでは語れないよね、本当のストッパーになるのは自分に対する、仕事に対する、使命感がきっちり会社にあって、職場にあって、個人にあって、自分が納得してないと。それが上位概念で、そのことによってストッパーかかるんじゃないかっていう議論なんですよ。

 だから最初言ってましたよ、みんな。「俺は(偽装なんか)やらない」って。俺は正しいから、そんなことはしないよ。断るよ。」私は言ったんです。「私は自信ない」って。「あなた、ホントにそういうこと言える?」だんだん不安になってくるわけですよ。あの、結果論として冷静になるとみんな言いますよね。「なんてバカなことをしたんだ!」でもその時に、あなたがそこにいた時に、それができたか・できなかったかとなると、なぜ私はそんなに正々堂々と「しません」って言える?自分のこととして考えていないんじゃない? という話から始まるんですよ。

 そうするとあるヤツが言ったのが、東北のほうに行くと・・・売り場の小さなスーパーなんか行くと、入りきらないで、ちょっとこう、積んでるのがあるんですよ。ショーケースの外にボコッとこう、積み上げて売っている・・・あれ、ホントは要冷蔵品はアウトなんですね。いけないんですね。全体が冷えてるからいいよっていう話もあるんですけど、彼はそれを言うんですよね。「私、間違ってました」と。「売上を取るためにスーパーに寄って、チラシを入れてもらうことばっかりやってました」と。「でも結果として、はみだします」と。「でもお客様は製造した商品の価値を、流通の品質を保ってない限り、家できちんとそのことが届けられない。だから自分の使命は、今までは売上のことだと思っていたけども、違うんじゃないか?」と。「お客様に対して、作った品物を価値をきちんと伝えられることを自分の使命とすれば、そのことをしちゃいけないんだ」と。で、彼は変わるんですよ。要するに売り場のフェース(陳列)の配分が悪かったとか、特売する時にはちゃんとした、そういうコーナーを設けましょうとかって、提案していくんですね。そういうことが、彼はそういうふうに思っていくんです。そんな議論をずうっとやっていくんですよね。

 だから、例えば役割っていう時に、子供ひとりで5人、お母さんがいたとすると、これ会社なんですよね。5人お母さんがいる。お客様がひとり・・・赤ちゃんがいる。あるお母さんは献立作る人、ある人は買う人、ある人は家で調理する、ある人は盛り付ける人とかいろいろあった時に、誰かひとり、手を抜いた時に、きちんとした商品・・・安心して食べさせるものができるの?あるお母さんは、安けりゃいいと。少々、ちょっと傷んでてもいいよ。煮るんだから。あるお母さんは、今日忙しいから、ちょっと調理、手を抜こうかと思った時に、ホントにこの5人ひとまとめで、愛情与えられるの?ってなった時に、みんなが、これ役割だから自分の役割さえ良ければいいと思うと結論は違うよね。でもここに、喜んで食べている、安心してる我が子の顔をいつも見たいという自分の・・・それがお母さんの使命だ、仮にですよ、そういうこと、きちんと全員が持ったら、答えはひとつしかないよね、と。それが役割使命の違いじゃないかっていうことを、青臭くやっていくわけですよ。それが原点ですね。

 あと、いろんなことやっていくんですけど、あの、まぁ同じです。「工場開放デー」って工場見学ですけど、今までは工場長が決めて、「何月何日に工場の見学会やるから頑張ろうね」「3000人来たね」「すごいね、3000人来てくれたね」「よかったよかった」「雪印、信頼回復してるね」と、思いがちなんですよ。でも実際にある工場に行って、これはお話したかもしれないですけど、社員がインタビューするんですね、「雪印ってどう思いますか?」って。「あ、大変ですね。頑張って下さい。待ってますよ。」同じお客様のところにテレビ局が行って、同じことを聞くんです。「冗談じゃないよ、こんなこと起こして。今日は今日で楽しい行事があるから来ただけよ」

---(笑い)

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