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土下座広告の反応
(広告は、こちら。)
土岡さん あの、企業人格っていうのと、自分の人格っていうのは、長年働いていると一緒になるんですよ。愛社精神という言葉とはちょっと別に。だから、ここに言っているのは企業の人格としてお客様に謝ろうと、要するに、今よく法人格とかってよく言いますよね、会社ってったってひとつの人間なんだ、「法人」だ。だから法人にも人格があるんだから、法人が謝るべきだっていうんだけど、働いている社員は自分の全ての人生を否定されるんですよ。この言葉は。だから工場の人は、「私は真面目にこつこつとやってきた、つもりだ」と。「だけど俺は悪質な行為の数々をした会社にいて、自分さえよければいいと思ってて、全て他人事で他人のせいにする人間ではあったというふうにここで決められた」と。で、家族がかわいそうだとか、OBから一番言われましたよ。冗談じゃないと。俺たちの、全てを、壊すのかと。
---(笑い)
土岡さん 全部出ましたよ、電話に。これをやった時に、実はこの前にですね、社内で私たちがずっと夜、集まってる時に、自分たち作文するんですよ。これ、会社から出してくれって言われた広告じゃないですから、自分たちが広告出さなきゃ、謝らなきゃっていう、自分たち作文して、夜・・・夜中ね・・・今考えると、もう、なんか青臭くて(笑い) あれなんですけど、みんなで持ち回りして読み合わせるんですよね。自分の気持ち言うんですよ。
それをお客様のモニターのところへ出すと、一言だったりする。「甘い」。「まだこんなことを言ってる会社なのか」。ショックだったですよね。自分たちのぎりぎりの精一杯の気持ちがショックだったんです。その時、思ったのは、社内で心地いいってことは、お客様にとっては全く違うことだと。お客様に心地いいということは、社員が痛みを伴うことでもあるということが、はっきりわかるんですね。でもここまで言っていいのかっていうのは、ありましたよ。
これを出した時に、実は2日前ぎりぎりになってできたんです。もう、何度も直しました。で、役員会に持っていきました。実は我々さっき言ったとおり、なんの権限もないんですよ。単なるチンピラが集まって、それでプロジェクト作ってやってるだけですから。で、その前に稲葉がですね、さっきの話をまとめて役員会に乗り込むんですよ。
---(沈黙→笑い)
土岡さん そうですよ。(笑い) おかしいでしょ。乗り込んでプレゼンするんですよ。で、役員が「誰に聞いたんだ?」と。「ちゃんとした調査なのか?」。彼が孤軍奮闘するんだけど、くっちゃくちゃになって戻ってくるんですよ。それでそうこうしてるうちにですね、ひとりの勘違い男がいて・・その7人にいるんですけど、そういう対策室ってあるんですね、どんと乗り込んでいっていろいろ広告のこととかやってるんですよ。で、それは今ね、ブランドとか広告のこと、下でやってますからって。役員さんとかほかの連中は、「下で」っていうのは、正式なルールがある部署でやっていると勘違いするわけですよね。で、彼も勘違いしてるわけですよ…「そうか、じゃあやってるんだったら任せる」って言われて、「おい、任せられたぞ」って言って来るわけですよ。「えーっ!?ホントなのか、これは」っていうことで、じゃあやらなきゃって、ものすごい勘違いから始まってるんですよ。自分たちはもう、このことを作っていくわけですよね。予算もなんにもないですよ。チンピラプロジェクトだから。
で、やってって、でもそれは役員さんがある種、認めてくれたんですね。あの、「お前らに任せる」ってことになって。なんでもないですよ。普通の、ホントに寄せ集めのメンバーですけど、これを役員室に持ってって、全役員がいる前でこれを見せたんですよ。そしたら、水を打ったように静かになりましたね。一言もなかった。で、その時に思ったのが、これは役員全員が総退陣を覚悟してるんだなと思いましたよ。言わなかったけど。それか、このことを真摯に受け止めているか、ふたつにひとつ。ものすごい空気だったですよ。それで2日前にできたんですけども、実はその、これを流したのが、24日当日の朝なんですよ。新聞広告が出る日に全社員に出したんです。間に合わなかったというのもあるんですよ。悪気はなかったと思うんです。精一杯やってそれだった。Q&A作ってね。で、全国の工場と支店に朝7時ないしは8時に全員出社、で、この広告と向き合ってくれというディスカッションをするんですよ。
びっくりしますよね、みんなね。この広告が出たら。で、実はその前に、一部見せて欲しいって言われて、見せた部署があるんですけど、そこからはですね、「お前がやめるか、俺がやめるかだ」と。「この広告を撤回してくれ」と。それ、夜の3時までやったかなあ。でも、「これでやらせてくれ」と(言ったら)わかってくれたんですけどね。で、ある人は奥さんに・・・単身赴任なんですよね、奥さんに、「とてもうちの家族に見せられない」と。「もうとにかくやめてくれ」と。ある人なんかはね、この(広告が載った)ページだけ切り取って、朝、自分で朝刊を元どおりにした人もいるくらいなんですよ。
---(笑い)
土岡さん すごいんですよ。で、つらいんですよ。で、その反対してる人が、奥さんから電話があったんですよ、後でね。そしたら「お父さん、今日の広告良かったよ」って言われて、全く自分は想像してないんですよ。「どうして?」って言ったら、「あれだけお父さんが好きだって言ってた雪印のバカ正直が出てるんじゃない?」って言われて、彼が「うちの女房もそう言ってる。お前らのやってることも、間違いじゃないな」。と、泣きながら来るんですよ、もうブワーッと泣きながら。もう、なんだって言ったらね、そういうこと言われたと。うん・・・覚えてますね。だけどこれは、私は未だに良かったか悪かったかは、わからないですね。あの、ホントに社員にとっては、麻酔なくして外科手術したのと一緒ですから。半年経ってから言われることあるんですよ。やっぱり、「お前たちが言ってた意味ってこうだよな」っていうことを言ってくれる人も増えてきたんです。
でもその時は、もうホントに大混乱ですよ、社内は。私もだからホントに、何人かの方に殴られそうになりましたしね。殴られてもいいなとは思ったけど。で、私たちの「体質変革の会」は、これでスタートしたんですけど、これでねじれましたよね、最初に。もう、これで社内に、ある種の、相当なネガティブ層を作っちゃったんですよ。でも、このとおりだっていうヤツもいるんですよ。だから、賛否両論です。
で、この後、700通ぐらいのメールと電話と手紙いただくんですよ。で、その中の3割の方が、とにかく頑張れと。ここまで詫びなきゃなんないのか、でもこの気持ちはわかると。というわけで、応援メッセージは3割ぐらいの方からいただいた。でも、3割の方は広告で済ませようとしている。それから、経営陣の顔が見えない。それから、まぁ、単純に言えば、犯罪企業に対して言うべきことはない・・・というのが3割ぐらいだったかな。あと6割ぐらいは、条件付の意見ですよね。こうしたらいい、ああしたらいい。客観的な意見も含めて。でも、私は3割の方が、味方にっていうか、味方って言い方はおかしいけど、まだこういう思いを持っていただいているってことに、ものすごい嬉しかったですよ。で、大阪のね、伊丹のお婆ちゃんかな、泣きながら電話してこられたんですよ。私、何回聞いても泣くんですけどね、ホントにお婆さんがね、切なる思いなんですよ。とにかく再建して欲しいと。それは私たちの牛乳なんだからって言われた時にね、こらえきれないですよね。自分、そういう気持ちで牛乳売ってないんですよ、今まで。なんだろうと思うんです。今までの自分が。
だからこの時にやったのが、我々これ、「土下座広告」って呼んでるんですけど、謝罪をして、約束をするんです。「体質変革する会」をスタートさせたんで、まだホントに何も決まってないと、でも見て下さいってことで、約束をして、で、約束をしたから、もう、動かなきゃいけない。自分たちで活動しなきゃいけない。だから2通りですね。お客様にお詫びする気持ちと、半分、会社を変えなきゃいけない、インナーに対するミラー効果っていうのもひとつ、計算になかったわけではないです。でもあまりに激し過ぎたです。(笑い) で、その時に決めたことが、お客様と接して、お客様に今の雪印をありのまま伝えようと。もう、ネガティブでもポジティブでもいいと、出そうということを決めて、こんなことやるんです。社員による交流会とか、工場開放デーだとか、後でお客様モニターとか、酪農体験とか。同時に4月にこれを立ててるんですね、「ゆきじるしどっとコム」って。あれ(とは別に)、公式サイトがあるんですよ。あのページ、勝手にやっちゃんたんですよ。社内の誰の許可も取らないで。
(一同笑い)
土岡さん まぁ、こんなんですからね。自分たちで作らせてもらったんです。
ぬ←此方 る 彼方→を
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