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「再利用」をめぐる誤解
土岡さん まぁ、これは大阪工場でお客様から回収してきた箱を全部折り畳んで残すんですよ。証拠品ですから。勝手に処分しちゃいけない。これが夏だから、もう、腐敗するんですよね。支店の中、すごい匂いなんですよ。クラクラきそうな匂いばっかりですね。で、これはお客様の苦情を受けてる、これ何やってるかというと、お客様から苦情があって、どの方面であるかということで自分が走っていかなけりゃいけないんで、これはその、情報ですね。こういうふうにお客様の情報が変わっていくっていう。確認してるところ。
これが12時1時2時3時・・・ずうっと続いていくんですよ。毎日、だいたい800人から900人の社員が2、3日交替で入れ替わって、延べ3万人が行きましたかね、社員として。ほとんどだからみんな寝ないんですよ。そのまんまでね。で、お客様ひとりについて、やっぱり最低でも3回行かなければいけないんですね。まず、事情を聞きに行って、お詫びして、商品があれば持って帰って検査に出して、検査結果が出たらまた行って、っていうのが3回ですから、終わらないですよね、3回じゃ。凄まじい回数だから、延べ10万コールじゃきかないですか。ひとり、30万コールくらいですかね。ひとり3回だからね。そのぐらいお客様とお会いしてますよね。
行った社員でやっぱり一番強烈な体験を持っているのは、寝たきりのお爺さんがいて、で、車椅子のお婆さんがいらっしゃるんですよ。で、両方とも、この低脂肪飲まれて、もう、寝たきりのお爺さんだし、お婆さんは車椅子だから病院にも行けないわけです。這いずり回ってお爺さんの看病をして、でも自分も悪いわけですよね、体がね。そこに社員が行った時には、もう、土下座して涙流すしかないっていう状況が続くんですよね。もうこれ、しょうがない話なんですけどね。で、社員もとにかくお客様の前で正座をして座るから、まぁお客様の怒りがありますからね、3時間、4時間、もう延々と座るでしょ。で、帰る時、立てないんですよね。立った瞬間にそこはちょうど田舎家だから土間から転げ落ちて、両足骨折ですよ。それでもお客様やっぱり許してくれないですよね。当然ですから。だから何人も社員が地べた座ってホントに額擦り付けて謝るんだけど、やっぱり被害に遭われた人はそんなもんじゃないんで、それがずうっと続いていくんですよね。
(モニターを示して)これがその当時の一部の状況ですね。で、さっきのことを総括すると、やっぱりあの、事故を事件にしてしまったということが一番大きいですね。最初は事故ですけど、やっぱりあの、さっき言った、告知が遅くて被害を拡大させてしまったという初期対応の甘さ。それからもうひとつは、公表される内容がコロコロ変わっていきましたよね。結局、大樹に行き着くまでの時間に、洗浄不良とか、再利用だとかいろんなことをお客様に不安を与える結果。それから「寝てない」というあの有名になってしまった経営者の発言。まぁこれが「事件になりました」っていう全てですね。
もうちょっとこれ余談ですけど、大阪工場の衛生管理の問題ですけど、これは厚生省と大阪市が原因究明合同会議というので最終報告書を作ってるんですけど、そのとおりなんです。我々アレンジしてないんですけど、再利用行為を雪印がやっていたということがあったんですけど、これはあの、いわゆる食品衛生法の乳等省令・・・乳類を扱うための省令というのがあるんですけど、これに則ってやっているんですよ。牛乳から加工乳へ、加工乳から乳飲料へ、段階を経て使うことに対しては、一定の温度管理と検査をしていれば問題ないというのが当時の法律ですから、まぁ省令ですから、問題ないんですね。ただその当時、業界全部そうだと思うんですけど、雪印の認識がやや違っていたのは、低脂肪って加工乳なんですよ。牛乳・加工乳というのは非常にお客様にとってわかりにくいんですけど、加工乳から加工乳には使っちゃいけないということになってしまったんですよ。この事件で。ホントは、当時は加工乳から加工乳っていうのは、みんな使っていいという認識で使ったんですけど、まぁ正式のお達しが出た時には、それはダメだということになって全て雪印がやったことは違法だったということに、そのことは整理されてしまいました。これは、いろいろ思いもあるんですけど、それが、まぁ、結論ですから。それから品質保持期限を超えたものを使ってたんじゃないかというのがありましたけど、報告書にはこう書いてあります。「混じっていた可能性も否定できない」。お役所言葉ですけど、事実あったようです。4件か6件ぐらいあったようですね。年間でどのぐらい処理するのかわからないですけど、年間を100%とするとたぶん0.1%にも満たない件数だろうと思いますけど、事実としてはあった。
で、これも言いわけでもなんでもないですけど、なんでこういうふうになるかっていいますと、例えばコンビニエンスストアさんのオーダーっていうのは、早いところで今朝の10時、ぎりぎりで2時とか3時ぐらいにオーダーいただくんですよ。明日販売する分をと。そんなの作れないですよね、その時に言われて作れないですよ。だから、工場側からすると需給を見込むんですよ。明日は雨だろうとかっていう。で、要するに100ケース注文受けて90ケースしかなかった時は欠品なんですよね。欠品というのは重大なペナルティなんで、絶対に100ケースって読んでても、110ケース作るんですよ。必ず欠品しないように作っていくんです。突然に、でもそれがキャンセルを食らったりすると、まるまる100ケース、ドーンと残るんですよね。それはだけどメーカーが勝手に見込んで作っているという商品ですから。全く正常な商品なんですけど行き先がないものがあるんですよね。冷蔵庫の中に。
そのものをさっきのルールに則って、適正な温度の管理の中でもう1回、商品に使うってことをやってるんですよ。まぁこれ、リユースっていうか、ネスレさんなんかはっきり言ってますよね、これ。リユースって言ってますけど、我々は言葉悪いですよね。再利用って普通言ってたんですよね。で、そのことでドーンと積み上がった中を、工場の冷蔵庫業者さんっていうのはもう、ひたすら作業でいくんですよ。時間に追われるから。タッタッタと入れて、何日何日何日と、こう、書いていくんですね。で、それが品質保持期限が切れてたかどうかっていうのは、たぶんその膨大な作業の中で起こってきてる話のようなんですが、だから、故意か過失かといったらわかりません。そのことをやった人しかわからないですけど。結果的にはそういうものもあったというのは、報告されています。返品したものをもう1回使った。これが一番致命的だったんですけど、はっきり言ってありえないです。どこか量販店に行ってお聞きになっても構わないと思うんですけど、まぁそれはまともに聞けないでしょうけどね・・・
---(笑い)
土岡さん 基本的に商品は買い取りなんですよ。ダイエーさんならダイエーさんとこに入った商品は、ダイエーさんが全部買い取るんです。買い取って返品っていうのはありえないです。買い取り―売り切りっていうのが今の日本のルールですから。たまにですね、持って帰ってくれっていうのは、小さな個店さんにはあるんですけど、それは産業廃棄物として持って帰ってくれと。
我々は、まぁこの中で誤解を生んだのは、例えば商品を持っていって冷蔵庫と同じクルマで走っていきますよね。で、お店さんが「いや実は今日頼んだんだけどいらないわ」と。「持って帰って」と。こう(言われて)、帰ってくる場合があるんですよ。だから卸してないもの、出荷してないもの。そういうのも、ままあるかもしれませんね、みたいな話は、もう、全く誤解の元であったような気がしますね。で、結局ここは、ハテナにしてるのは、我々は一切そういう社内のルールブックとかそういうのはありませんし、ないことの確信はしているんですけど、この時問題になったのは、「ないことを証明しなさい」ということで、非常に(証明が)難しいことなんですよ。あの、店頭から持ってきてそれを入れているということがないということを証明しなさいって、どうやって証明していいのか、わからないですよね。やってないものはない、証明のしようがないんですけども。
このこと全体として言えることはですね、工場で製造して冷蔵庫があって、そして出荷をするという時に冷蔵庫を委託業者の人の管理下に置いてたんです。でもホントはこれは雪印乳業の管理下なんだから、ここに対しての管理・指導・チェックというものをやるべきだったのに、お任せをしていたというのが実態で、いかようなことを言われてもですね、そのことはわからないですよね。証明できない。
---そのお任せっていうのは、やっぱりコスト削減のためですか?
土岡さん あの、そういうことではないですね。コスト削減というか、管理をしなきゃいけないというルールはあったんですよ。それをある種、できてなかった。長年の仕事の中で、工場の仕事はその工場の管理者のほうが、むしろプロですから、プロのほうに対して「頼みます」ってことで終わってたってことだと思います。まぁその時点で、今全部、このことを全部やってません。やってませんっていうのは、さっき、その、需給で多少ダブついた商品も、もう全部廃棄してます。
は←此方 に 彼方→ほ
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