む
社会貢献のあり方
---保健所の方が来てやるっていうのは、どちらが決められたことっていうか・・・
土岡さん あの、保健所さんにとっては、雪印乳業をってことはないんですよね。監視業務として保健所さんの業務の中に入ってますから、で、たくさんの企業持っておられますけど、あの、ある種それは、我々からすれば来て下さいって言うわけにはいかないんですよね。
---(笑い)
土岡さん 忙しいですから。でも逆にいうと、来ていただく時に私たちはその姿勢で応じてるというか対応させていただいているということですね。で、もっというと、さっきHACCPっていうのがありましたけど、あの当時記録がなかったっていうことがいっぱい問題起こしたんですよね。やってるかやってないかわからないっていうことなんで。だから前は、例えば「食器を洗ってました」って書いてるんですけど、今は「箸の右1本を何月何日誰がどういうふうな形で洗浄しました」っていう、「スプーンは・・・」っていうふうに全部、だから、項目はすごいんですよ。でもそれが、あの時の記録になかったっていう反省なんで、わかりますよね、そうすると。それをもう1回振り返ると検証できるんで、今我々は記録と検証の徹底っていうことでその繰り返しです。
---それを伝えなきゃダメですよ。(笑い) まさに、下手な広告よりもそれ自体を広告にするべきでしょうね。今まで・・・昔、今、みたいな感じでね。
土岡さん そうですね、うんうんうん。
---こう、話伺ってると、ホントにスタートライン立ってるなっていうのがわかりますね。今の話聞いてるとホントに。ちょっと語弊がありますけど、まともになったなっていうのが実感としてね、感じますね、それは。
土岡さん そうですね。やっぱり当たり前のことが当たり前にできるってすごくハードルの高いことなんですよ。だから我々は今まで当たり前のことだからやってきたよ、っていう認識があったけど、「当たり前のことってどこが当たり前なの?」なると、極めてハードルが高いことなんですよね。で、それをまぁ、やってくしかないですけどね。
---先ほどのお話の中で企業の内部の役割よりも社会の一員としての使命を大切にしなきゃいけないっていうお話があったんですけれども、その取り組みを消費者はどこで評価するかといったら、やっぱり、どれだけ社会貢献してるかとか、そういう観点からも見ると思うんですけれども、先ほどもあったように、環境に対する対策とかはいろいろなされていると思うんですけれども、これから検討している・・・文化活動など会社の外へ向けての何か検討していることがあったら教えて下さい。
土岡さん あの、そうですね、社会貢献と言える立場にないですね、まだね。マイナスの状態ですから。これがですね、社会貢献っていう意味とはずれるのかもしれないんですけど、その、社会への貢献の仕方っていうのは、いっぱいあるような気もするんですよね。例えばかつていわれたメセナっていうああいうことではなくてですね、例えば私たち雪印乳業が・・・当然、企業だから利益とコストは追求するのは企業として当たり前の話なんですけども、一方で、例えば乳脂製品を通じて今まで食卓文化を作ってきましたっていう言い方もあるんですよ、雪印乳業はですね。でもそれっていうのは、すごくメーカーから見たら不遜な言い方なのかもしれないですけど。私たちが、例えば俗っぽい言葉でいうと、このことを通じてお客様が健康になってくれればいいね、或いはそのことで、例えば新しい商品の食べ方で家族が幸せになってくれればいいねっていう、それも私は社会貢献のひとつだとは思ってるんですよ。そういう貢献の仕方っていうのも。
ただ具体的にどういうふうに社会貢献するかってなると今現在、雪印乳業の社会貢献はこれだ、っていうのは持ってないです。あの、伝えきってないっていう先ほどのお話からいくと、例えば食中毒の後にですね、食品衛生研究所っていうのを作ったんです。それは毒素とか微生物の研究をする研究所なんですよ。要するにあのことを起こしてしまったので、ほかの食品企業に対してそのことを検査を担う、或いはその、学術研究をした中を・・・それは、ま、研究の世界でしかないですけど、発表をする。で、こういうことを啓蒙をしていく、促していくっていうことは、社会貢献っていうふうに言えるかどうか・・・それ、ひとつの活動としては今やってるんですよ。その教訓に於いて反対側ですけど。ま、今、そういうとこぐらいですかね。
稲葉さん うーん、そうですね。
土岡さん ただそれも、さっき仰ってるように・・・私もそれ不思議に思うんですよ、学会でしかやってないですから。ホントはね、あの、三菱総研だとかいろんなところは全部、研究したものを本にして出版してますからね。だから伝え方からすると、まだまだこう、閉じられた世界の中かもしれないですけど、ほかの企業に対してそういうものを提供したり、依頼があったらそれを分析したりするっていうことは、ま、ひとつやってますね。あとはね、あんまり言ってないんですよね。神奈川県にこどもの国牧場ってあるんですよ、横浜のほうにですね、広大な敷地があるんですけど、あそこに雪印牧場ってあるんですよ。
稲葉さん ある。
土岡さん 全然PRしないんです。
---(笑い)
土岡さん あれ全部、寄贈してるんですよ。それであの、牧場運営をうちがやってますけど、例えばアイスクリームとかソフトクリームとかね売れたのは全部寄付、寄付ですね。で、我々からすると、もう、利益を出さないような格好になってますけど、そこには子供たちに対して酪農体験ファームっていう研修センターを持って、酪農を教えたりするんですけど、ま、そこは一切、雪印ってことは出してないです。そういうことはやってるんです。(笑い)
---まぁその話はね、前回(お話した際に)も(話には出たが)あの、アピールしない美徳みたいのが(あって)・・・
土岡さん そうですね・・・だいたいそうなんです。あの、こつこつやってれば評価されるっていうので今まで来てたんですけど、間違ってるんです、それは。
---(笑い) いやいや、そう決め付けるのも・・・。そういうのもあると思いますよ。逆に今はなんかこう、アピールし過ぎてる・・・ほかの企業見てもね、アピールし過ぎてる面があるなっていう。かえってそうするとね、コマーシャリズムだとかいって嫌悪されたりしますからね。ま、バランスなんでしょうけどね。その辺はね。
土岡さん そうですね。まぁ、アピールっていう言葉が正しいかどうかは別としてもね、こどもの国のことはそれでいいと思うんですよ。全然それ以上あんまりすることないし。
---そういうのと、またちょっと突飛な話になるんですけれども、あえて名前を出さないと僕、雪印でできないことってひとつあると思うんですよ。その、もしちょっと、これから業績が上がってきたらなんですけど、是非雪印には世界の食中毒や世界の食品犯罪に対する博物館っていうのを作って欲しいんですよ。そういうのって、もう、まさに雪印じゃないとできないと思ってるんですけれども、その、自らの苦い体験があるわけですから、それで来る人たちもそういうことを知って来ると、ほかの・・・ただ単に博物館がポンとあるんじゃなくて、何かしら伝わるものがあると思うんですけれども。こればっかりは、雪印に是非やって欲しいと思ってるんですけれども。
土岡さん そうですね。まぁそこまで思わなかったですけどね、社長が言ってるのはね、少し今仰ったことと似てるのが、実は大樹工場・・・雪印乳業自体は札幌で、ま、場所はどこかといったら、創業の地点札幌から始まってるんですけども。札幌近郊から。で、社長はまだ公に言ってないし、自分の思いで言ってますけど、大樹工場が第2の創業の地にしたいと。なぜならそこに事件が、事故があったから。そこにあの、小さな資料館を作りたいと。(今言ったような内容ではなくて)いわゆる(普通にある)資料館の話、を作りたいと。で、ま、これも業績が回復してからなんですけど、そこにあの、社員の社宅があるんですけどね、もうほとんど使ってないんですよ、今は。昔からのヤツですけども。そこを改造して研修棟にしたいと。で、お客様を含めて、社員も含めて、で、新入社員も採れるようになったら、それからまぁ新入社員じゃなくてもいいですね・・・5年後、10年後っていう階層別にそこにみんな来て、そこで研修をして、工場体感して、そしてそこの教訓をしっかり・・・っていうそういうものを大樹工場に作りたいっていうのが社長が自分で持ってる、具体的な夢なんですよ。ま、今みたいなお話も、ちょっとね、してみますよ。
---(笑い)
---そういうことこそね、すぐ実現して欲しいんですけど、得てして、すぐ実現したいことっていうのは、一番最後に実現されるんですよね。
土岡さん そうですね。あの、私はいいと思ってますね。
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