3憩 ら寂しき最東端の街に花咲く ニュー娯楽食文化 -
海道室市/
標津町- 第5
第1日 第2日 第3日 第4日
根室(ねむろ)



 昨日限りで青函トンネルを走る旅客列車が運行を終了した。いよいよ北海道新幹線開業へ向けての最終準備が始まる。1988年のトンネル開業以来、本州と北海道は地続きとなっていたが、本日より3月26日の新幹線開業までの間、貨物列車の運行は続行されるものの旅客面に関しては、28年ぶりに北海道は内地から切り離れた状態となる。青函連絡船の時代が一時的に戻ってきたのだ。根室滞在最後の朝は、北海道にとっても歴史的な朝となった。

彼方の内地で桜が開花した頃、此方では「はまなす」が散り、今日も雪が降る。
ああ、何と京から隔絶された北の大地であろうか。



 昨日の夕闇の美しさを引き継いで、最終日にして一番の晴天に恵まれた。ビエーッと冷え亘る空気の波に呑まれながら、早速の朝の散歩である。一路西を目指した。

 宿泊先の眼下を走る国道44号は、クルマで根室から外の世界へ出るほぼ唯一のルートとなっている。朝の時間は西行きの通行が多めである。釧路や中標津に用があると云うことだろう。反対に夕方は、根室市街方向へのささやかな帰宅ラッシュが展開される。

 根室郊外には、大型量販店の姿は無く、クルマ関係の店やパチンコ店が目立つ。そんな90年代前半の郊外風景が展開される中に、根室ローカルのコンビニ「タイエー」はある。
(第5日 朝食)
N03-026(第57号) やきとり弁当@タイエー →

店内中央のキッチンスタジアムで作られる、やきとり弁当。函館名物のハセガワストアと同じ形態。タイエーはハセストのチェーン店なのだ。
よって肉はもちろん、豚。豚串のやきとり=道南と云うイメージがあるが、道東の中の道東・根室でも豚食文化は花咲いている。

やきとり弁当以外の弁当・惣菜類も豊富。パン屋もある。
サンドウィッチやドリンクはセイコーマートのものが。タイエー(ハセスト)は、セコマと提携関係にある。


知床連山の美麗さたるや圧巻だった。盆の上にひょっこりと載っているような佇まいは、旭川から眺める大雪山系に似ていると思った。
続いて国後島方面。


上・泊山 / 下・羅臼山

 私は根室一の企業の後ろに控える羅臼山をただただ眺めていた。あれが異国なのかと思うと不思議な気持ちに襲われるものだ。国後は近くて遠い。知床連山の方が奥になるのだが、より鮮明に見えるから遥かに近い気分になる。それは内地と外地を分かつ、心理的な差のようにも思えた。どこの国に属していようが山自身にとっては関係の無いことだ。その佇まいはとても静かなものだ。木陰で読書している貴婦人のようだった。ぼんやりとしている内側から凛とした骨もまた感じる。10分…30分…1時間… …私と羅臼山の間には無音の詩が流れる。山からの囁きを聞き逃すまいと、音がどんどん身体の中から消えてゆく。次第にガスにかき消されて薄くなる山の姿は、どこまでも静けさに包まれていた。






 根室で見たもの・接したものは、最果ての奇跡が生んだものだった。根室はいつも待っている。すぐその先に良くない知らせがあったとしても、端っこに位置する根室に出来ることは待つことのみだ。根室は、いつでも待っている。擦れた気持ちで最果ての地を訪れる人たちを、じっと待っている。想像通りの寂しく厳しい景色が広がり、擦れた気持ちを満たしてくれる。その一方で想像から外れた個性と多彩さを誇る食空間も広がって、味蕾と胃袋の冒険心をも満たしてくれる。明日を生きる新鮮さを与えてくれる。根室には、茫漠とした最果ての風情の中にも、強烈に光る豊かさがある。


 花咲線には時折、ルパン3世ラッピング車両が走る。第2日に厚床から根室へ移動した際の車両もこれであった。根室と厚岸の間にある浜中町が、ルパン3世原作者モンキー・パンチの故郷と云う縁から実現した取り組みで、外装だけではなく内部にも、ちょっとしたアクセントが施されている。
 しかしこの車両の驚きは寧ろそこにあるのではない。特急でもないのに、何と座席が特急同様のもので、背面にはテーブルが付き、悠然とリクライニングが利く。それでも、特急料金は不要であるのだから、お値打ちだ。





 根室を出発してから2時間と少し。花咲線車窓のハイライトとなる風光明媚な厚岸湖と厚岸湾沿いを走り抜けた列車は、釧路市街に到達した。釧路川を渡れば、終着駅釧路はもうすぐだ。車内には晴れやかな慌ただしさが広がる。都会の匂いだ。








 釧路駅の1番線はだだっ広い。既にここから広大な湿原が始まっているかのようである。この駅には今なお、昭和の民衆駅の雰囲気が色濃く残る。元来鉄道は「官」のものであったが、民間に駅舎建設の費用を拠出させる代わりに商業施設の開設を認める…これが民衆駅方式だった。民衆駅には「ステーションデパート」が設けられるのが定番であった。既に釧路のステーションデパートは閉鎖されているが、それでも釧路駅は懐かしい雰囲気に包まれている。高架化される前の旭川駅もこんな感じだったことを思い出す。それにしても「民衆駅」とはなかなかおどろおどろしい表現だ。官尊民卑、官からの貴族的目線と、民の草の根から沸き立つ大胎動が合体した爆発的ネーミングである。昭和のニッポンは、荒削りで若々しくて元気だった。釧路が繁栄していたのも、そんな時代の頃だった。

 昭和感溢れるホームに平成現代模様の車両が止まっているのは、如何にもアンバランスに映る。キハ283系・スーパーおおぞら号は、釧路に一つの革命的状況を引き起こした車両である。この振り子式特急は従来よりも1時間近く短縮して約3時間半で札幌との間を結んだのだ。しかしそれはキリキリするほどに無理に無理を重ねた末の勲章でもあった。次第にトラブルが頻発するようになり、トンネル内で大火災事故を起こすに至る。昨今の宅配便等に見られる、過剰なサーヴィス追求による現場崩壊そのままである。最高時速を130kmから110kmに引き下げるなどして、札幌との間は現在4時間ほど掛かるようになっており、当初のインパクトは薄れているがその分、乗り心地は良くなっている。以前は弁当を広げようにもこぼれ落ちぬように細心の注意が必要だったものだ。


 3月26日のダイヤ改正を機に消えるものの一つに、客室乗務員によるグリーン車サーヴィスがある。ドリンク・おしぼり・雑誌に毛布。飛行機と基本的に同じレヴェルのものが無料で供されてきた。JR北海道のグリーン車は、東京のものとは違って、広々とした3列シートである。それだけでも悪くないサーヴィスレヴェルではあるのだが、付加価値と云うものが非常に素晴らしかった。客室乗務員の質にしても、飛行機に決して引けを取らないものだ。乗車時間4時間×3列シート×客室乗務員サーヴィス=グリーン料金4,110円は、お値段以上の充足感をもたらしてきた。それが合理化の名の下に、崩されてしまう。


 おしぼりに描かれているかわいいイラストがイイ。ほのぼのしてくる。デザイン的にもカッコイイ。以前は黄緑の文字で「JR北海道」と書かれていただけだったから。

 しかしそれは不毛な合理化である。利用客から見て合理的でないのはもちろん、ノウハウの継承や得意客との直接対話チャネル保持と云う観点から、JR北にとっても失うものは小さくない。合理的ではないから「不毛」なのだ。しかし何故このような手をJR北は打つのか。経営支援して貰うためには「合理化アピール」をするしかない。支援を受ける側の義務であり礼儀である、と云うことだろう。だがこれでは経営支援して貰えば貰うほど、その代償としてサーヴィスは低下し、客離れを引き起こし、競争力を失う。これのどこが合理的であろうか。客を犠牲にする「礼儀」とは何だろうか。不毛である。鉄道の「鉄」と云う字は「金を失う」と書くから、忌み嫌われて、わざと「金に矢」と書く場合がある。この不毛な「合理化」は、金を失うために行うようなものだ。


 釧路では駅弁が販売されているが、車内販売を利用するために敢然と通り過ぎた。車内販売には独自の商品が並んでおり、メニューを眺めているだけでもなかなか魅惑的なのだが、積込み数には限りがあるため品切れする場合が少なくない。そこで今回はきちんと事前予約をした。そうすると席まで届けてもくれる。

 特にサンドウィッチに関しては品切れになるパターンが多かったから、サンドウィッチ郷ならぬサンドウィッチ狂の私としては、大変有難い。このサーヴィスを使わない手はない。

(第5日 昼食)
N03-027(第58号) レストラン特製サンドウィッチ@特急スーパーおおぞら号(ホテルクラウンヒルズ釧路) →

<レストラン特製サンドウィッチ> ¥600(込)
 昨今、JR東日本の車内販売では「駅弁」でもある大船軒のサンドウィッチが供されるが、JR北海道管内にはそんなスーパー有名なサンドウィッチは無く、出発地の業者が車内販売のために作り上げるオリジナル・サンドウィッチが提供される。サンドウィッチ狂として、これほど嬉しいことはない。
形状→★★★★☆ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★☆

 続いては、おやつの登場となるのだが…そのために食事を軽めに切り上げた。が、なかなか別腹と云うわけにも行かない。スーパーおおぞら号のパワフルなディーゼルエンジンのように、簡単に胃袋が唸りを上げて稼働してはくれない年頃になってしまったか。

(第5日 八つ)
N03-028(第59号) ホワイトケーキ@一爐菴 →
N03-029(第60号) プリンアラモード@一爐菴 →

 一爐菴は根室駅前に店を構える。ニューモンブランと同じ並びだ。和菓子、後に洋菓子もと云う日本全国馴染み深い変遷を辿っている。企画ものの洒落た菓子もあり、なかなか面白かった。
N03-030(第61号) 焼きドーナツ(プレーン)@一爐菴 →
N03-031(第62号) 根室ラスクマン@一爐菴 →

N03-032(第63号) みそぱん@一爐菴 →

 車窓右手にワイン城が見えてくると、池田に到着だ。釧路の次の停車駅・白糠から1時間に亘り、停車駅が無い。昔とは違って特急の停車駅も随分と増えてきた中で、1時間も止まらないことに北海道の雄々しさとスーパーおおぞらの「スーパー」な部分を覚える。この先、トマムと南千歳の間も1時間以上に亘って停車駅が無い状態となる。池田から先は帯広を核とする十勝の中枢部を通る。十勝には市が帯広しかないが、これからスーパーおおぞら号が通過する幕別・芽室は大きな町で北海道基準では立派な市である。帯広の北隣に位置する音更町は人口が4万人超と、全国基準でも市として遜色のない規模の自治体だ。十勝は北海道らしさと北海道の中の異質さ双方を感じる面白い地域である。道内で「札幌」に対抗し得る第一の地域は、十勝である。駅周辺にはビルが林立し、百貨店もある帯広には、都会風が吹く。

 高架化されている帯広中心部を過ぎて地平に下ると、明らかに線路を剥がした跡が寄り添うようになる。帯広貨物駅と日甜芽室工場を結んでいたが2012年に廃止された十勝鉄道の跡だ。十勝鉄道は嘗て十勝一円で軽便鉄道を運行していた。帯広駅南口付近から稲田にあるビート資料館方面へ「とてっぽ通」と云う名の遊歩道が延びているが、これも十勝鉄道の廃線跡である。軽便鉄道が全廃された後も、根室本線と並行して走る貨物線だけは、2012年に石油輸送が取り止めとなるまでしぶとく生き残っていた。札幌から特急に乗って帯広に近づいた際、左から十勝鉄道の線路がひゅっと現れてきて寄り添う様は、まるで複線区間を走っているようで、札幌とは別の新たな都会へと辿り着いたのだなと感じ入ったものだ。

根室本線からは「大平原十勝」を思わせる車窓は余り望めない。しかしそれでも、十勝だなと思わせる景色は枚挙に暇がない。

十勝清水駅を出てすぐに見られるバイオエタノール工場なども日甜の製糖工場と並んで「農業の十勝」を感じさせる風景だ。
が、経営会社は2015年6月に解散。したがって既に操業していない。原料となるビート不足に悩まされ、コスト高から抜け出せなかったとか。
バイオエタノールと云えばブラジルのサトウキビのイメージがあるが、ビートも砂糖の原料である。
砂糖は人にとってもクルマにとっても手っ取り早いエネルギー源になるらしい。


 新得を発車すると十勝平野も尽きて列車は高度を上げてゆく。ここから先は日高山脈と夕張山地を突っ切ることとなる。駅は少ないが信号場の数は矢鱈と多い。ポイント部分が全てスノーシェッドで覆われており、トンネル区間も長く、特異な車窓風景が展開される。そこで車内誌に手を伸ばすと、何かが挟まっていることに気が付いた。

 いや、これは素敵な冊子だと感心させられた。簡潔に記載された沿線案内なのだが、イラスト、そして説明をする文字も手書きで温い。更には車内の案内についても同じく手書きで示されている。トンネルの多い区間を走行するだけに携帯電話が通じにくいエリアも記されていた。

 鉄道の旅の良さはその分厚さにある。それは設備面とちょっとした心遣いの積み重ね・組み合わせだ。バスはただ単に移動するだけの手段である。観光バスと云うものがあるが、観光バス自体に観光要素は何もない。狭い車内に押し込められるだけだ。その点、列車には色々なものを組み込むことが可能だ。観光バスと観光列車。言葉の構造は同様でも、中身は全くの別物である。わざわざ観光列車をこしらえなくとも、一般の特急列車でも、乗客に多彩な材料を提供することが出来る。スーパーおおぞら号のグリーン車は実に素晴らしいものだった。

 南千歳に辿り着くといつもの景色が付いて回ることになる。新千歳空港と札幌の間を何度でも往復する景色たちよ。東京から新千歳に到着した時分にはあれほど感動する景色も、大いなる北海道を体感した後には些か色褪せて見えてくる。




札幌(さっぽろ)

 スーパーおおぞら号は釧路出発から4時間ちょっとで無事札幌に到着した。根室出発からは6時間半が経過している。根室は遠い。札幌までは網走から5時間半、稚内でも5時間なのだから。うら寂しい根室に馴染んできたところの札幌への転進。北の大都会は眩いばかりの光と人混みの喧騒に包まれていた。頭がクラクラする。根室では余り感じられなかった北海道新幹線開業ムードが、ここ道都札幌ではふんだんにちりばめられてもいた。


 札幌駅の賑わいが次々と目に焼き付いてくる。根室の日々が嘘のようだ。北海道経済が傾いているのが嘘のようだ。これだけ駅が賑わい、出入りする列車の殆どがJRになってから作られた新しい車両なのに、JR北海道が今にも潰れそうだとはとても思えない。大阪や広島では今でも、国鉄型車両が大活躍していると云うのに。札幌の表層から北海道の深層どころか、ちょっとした断面であっても推し量るのは、なかなか難しい。


駅前から大通・ススキノ方面を望む。地下道が連なっている影響で地上の歩行者数は、余り多くない。

扉を開けると「細長い通路があって奥にベッド」が定番だがいきなり目の前にベッド。法華クラブらしさを思い出す。


 札幌、北見、旭川・・・スイッチ捻れば伝わってくる道内盛り沢山感覚。ニュース番組は北海道と云う一つの島に、北海道と云う一つの自治体しか存在しないことの面白さが最大限発揮される場面であるように感じる。北海道の多様さと札幌一極集中の凄まじさ双方が誘発される矛盾絵図は、「一つの北海道」によって描かれ続けることになる。そして函館、新幹線。




 新幹線開業の裏で最も割を食うのは並行在来線だ。そもそも地方の鉄道に脱赤字を求めること自体が先ず以て間違いである。鉄道と云うのは旅客と貨物があって、旅客には特急等による長距離客と普通列車による地元客が存在する。道南いさりび鉄道は引き続き貨物の大動脈として機能するから恵まれてはいるが、青函特急が走らなくなっては黒字になりようがない。3セクで地元密着戦略が取りやすくなることを上手に活かすしかあるまい。根室のバスターミナルが地元密着仕様だったように。
 新函館北斗から座れるか分からない3両編成の通勤型電車に乗って函館を目指すよりも、近づく函館山を眺めながらのんびりと、いさりび鉄道のボックスシートに座った方が、はるばる函館にやってきた雰囲気は存分に味わえる。JRから道南いさりび鉄道に変わっても全便が函館駅まで乗り入れることに変わりはない。木古内乗換ルートはおすすめだ。
夜の札幌散歩をちょこっと。大都会の只中でじっとしていられるかと眩暈のように血が騒ぎ回る。



三越のライオン像が見つめるその先には街の変化が映し出されていた。

「4丁目プラザ」の前を路面電車が走る。2015年12月、画像右端の西4丁目電停から狸小路を経てすすきの電停までの区間が開通、市電は環状運転を始めた。
この区間に市電が走るのは廃止された1973年以来のことである。




この通行量の差よ。都会の夢は地下開く。
札幌駅と大通の間の地下道<地下歩行空間>が開通してちょうど5年が経った。


 朝、私は最東端の町から国後の山を眺めた。その光景を胸に仕舞い込んで、振り子特急に乗って、札幌へとやってきた。札幌は夢のような町だ。夢が見られる町だ。それだけ沢山の街があり、人が行き交い、店が営まれている。同じ北海道でこれだけの違いがある。「人口ダム」と云う概念がある。北海道では札幌がそれだ。札幌と云う受け皿があるから、北海道から内地への人口流出に一定の歯止めが掛かっていると云う考えだ。確かにそれは事実だろう。しかし同じ北海道に札幌と云う大都会があるからこそ、上京するほどの覚悟は持たずに、もっとカジュアルな気分で地元を離れることも可能になった。札幌のお蔭で道外への人口流出は大いに回避されている。が、しかし、札幌のせいで道内他地域からの人口流出が大いに促進されている。振り子のバランスは大きく狂わされたまま、ただ年月が流れている。酷使されたスーパーおおぞら号の疲弊はそのまま、「札幌」以外の北海道各地域の疲弊と重なる。夕食はそのスーパーおおぞら号の車販オーダーからサンドウィッチ以外のもの。
(第5日 夕食)
N03-033(第64号) ザンギ弁当@スーパーおおぞら号(釧祥館) →
N03-034(第65号) くしろ北紀行弁当@スーパーおおぞら号(釧祥館) →
<ザンギ弁当> ¥680(込)
 ザンギと云うのは北海道の味付け唐揚げのこと。釧路に限った食べ物ではないが、その本場である。醤油ベースの調味液に浸してから揚げるから、通常の唐揚げに比べると味が濃く、肉までもが沈み込んでいるような風味を放つ。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆
<くしろ北紀行弁当> ¥1,080(込)
 北海道の企画モノの幕の内は"食べられる"印象しか持ち合わせていない。先ずごはんがみっちりと詰められている。おかず多めの弁当だが、ごはんもしっかり充実。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆

 札幌で過ごす夜は殊の外、熱く感じた。目の前に広がる大都会を眺めながら脳裏で再生される根室の姿は寂しく、侘しいものだ。しかしその中に独自性溢れる色とりどりの輝きがある。まるで氷河が生き残り、傍らに高山植物が花咲いているかのように。辺境故に中央の大きな流れには呑み込まれずにしぶとく残る強さがあり、辺境故に突発的な大きな波に一発でさらわれて無くなってしまいそうな儚さがある。そんな二面性に満ちた場所が根室だ。辺鄙でありながら、都会的でもある。海に向かって開けていて、海によって閉ざされてもいる。その海の向こうから顔を覗かせる国後はすぐ近くにあるようでずっと遠くに佇んでもいる。とことん、二面性がつきまとう場所だと私は思う。今度の旅は札幌が終着点ではない。新幹線開業の熱狂が漸く湧きつつある札幌から道南・函館へと向けて、新たな旅が始まる。
→第5日旅程→
根室 11:08 →根室本線(花咲線) 快速はなさき(3630D)→ 釧路 13:18  
釧路 13:34 →根室本線・石勝線・千歳線 特急スーパーおおぞら8号(4008D)→ 札幌 17:44
←第4日へ←  5  →道南編第1日→

旅の中で遭遇した食物の内、本文中では触れられていなかったもの
N03-047(第118号) かぼちゃパイ(一爐菴) →
N03-048(第123号) 日の出一番(一爐菴) →
東美餐珍帝國風土記目次
as of 2016.03 / uploaded 2017.1028 : 2018.0109 by 山田系太楼どつとこむ

©山田系太楼 Yamada*K*taro