舌自心→ 
舌は自ずと心をつくる
(N03-024 第55号)
駅前弁当 ::ニューモンブラン::
うら寂しき最東端の街に花咲くニュー娯楽食文化 第4日 にて遭遇
 根室駅前通りに佇む「ニューモンブラン」は、根室を代表する料理であるエスカロップを出す店として著名である。エスカロップは昭和38年「モンブラン」と云う店で誕生したが、「モンブラン」は同40年に閉店した。しかし38年に「モンブラン」から独立した人が「ニューモンブラン」を創業していたお蔭でエスカロップが絶えることはなかった。オリエンタルライスの「どりあん」は、この「ニューモンブラン」から独立して出来た店だ。「どりあん」は店構えからしてなかなかお洒落な雰囲気だったが、「ニューモンブラン」はお世辞にもエレガンス漂う趣に包まれてはいない。寧ろスポーツ新聞と麻雀が似合いそうな雰囲気である。ところが、だ。全く以て驚くばかりなのだが、チープな外観とは180°異なる重厚な秘密の空間が内部では展開されていたのである。
 メニューを開いてみると興味をそそられるものが目白押しで、非常に迷うところだったが、「駅前弁当」の文字にふと目が留まった。根室には駅弁が無い。一時期販売されていたようだが、今は無いのである。根室市内の厚床駅でも随分と長い間、駅弁が売られていたが、これも今は消えてしまっている。稚内や網走に駅弁があることを考えれば寂しい限りだ。それなら…とばかりに、食堂と云うよりも昭和の純喫茶の雰囲気だが、「駅前弁当」と云うネーミングを施して駅前食堂の矜持を持ち、駅の食風景構築に貢献せんと欲しているこの店の心意気と云うものを買うとしよう。
 売店で買っていた根室新聞など読み込んで、束の間の根室人気分に浸って寛いでいると、山海の幸が揃った迫力の弁当がマダムによって目と鼻の先に備え付けられた。駅前弁当略して「駅弁」。伝票にはそう記されているのだから、これが根室の駅弁だ。梅漬けが御飯中央ではなく端っこにちょこんと佇んでいるのが、何とも可愛らしさを覚えると同時に、日本の北と東の端っこに位置する孤高の根室を表しているようでもあり。根室の駅弁としての矜持と云うものを存分に示しているように思われた。最初は分からないのだが、おかずの重なり合いを解消した刹那に露わになった鮭の巨大さもまた特筆すべき根室性であろう。
 駅前弁当 ¥1,100(込) 形状→★★★★★ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★★
 ニューモンブラン→ 時:09:00-20:00 休:不定休 処:根室市光和町1-1 地図 電:0153-24-3301 食べログ





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as of 2016.03 / uploaded 2017.1021 by 山田系太楼どつとこむ
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