4憩 Shock! 新幹線がキタ!衝撃の食見聞記 -

海道幌市中央区/北区
海道町/雲町/万部町/館市/斗市- 第1
札幌(さっぽろ)
(第1日 朝食)
N03-035(第66号) カステラサンド(山森製パン) → N03-036(第67号) ラブラブサンド トリプルイチゴ(日糧製パン) →
N03-037(第68号) しっとりクリームパン(日糧製パン) →
<カステラサンド> ¥162(込)
 根室の食を代表する一品。地方へ行けば行くほどに甘いものはしっかりと、すこぶる甘く味付けをする傾向にある。ところが本品の場合は殊の外、塩味が効果的に作用してきて、甘ったるいところがなく、スナック感覚でほいほいと食欲が進む。
 形状→★★★☆☆ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★★
<ラブラブサンド トリプルイチゴ>
 生地・クリーム・ジャム、三者全てに苺使用でトリプルプレイの完成だ。生地が苺風味だから空白の無い味わいが安定的に広がるが、やはり、ぷるるんと佇む苺ジャムの強力な風味が全ての上に立っている。因みに日糧は現在、山崎パングループだが、ラブラブサンドの登場時期はランチパックよりも早い。
 形状→★★★☆☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆
<しっとりクリームパン>
 北海道性と云うものを打ち出すにあたっては、ミルクと云う要素は欠かせず、それはクリームパンの主たる構成要素であるカスタードクリームの核を構成する玉子の風味を上回るものとなる。しかしながら本品はミルキィな偏りを見せるものではなく、玉子とのバランスが非常に好ましい。
 形状→★★★★☆ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★☆

 朝食は全て、昨日まで滞在していた根室で仕入れたものだが、濃厚な余韻はテレビの向こうのニュースからも伝わってきた。根室の街をたびたび襲う高潮被害のことは小耳に挟んでいた。中心部一帯は低い土地だが、駅や役所は一段高い場所にある。山森パンの辺りが最も低い。港町の割にさほど急峻な地形ではないことが被害域の拡大に繋がっているように感じられた。


 雲の谷間から次第に晴天が浸食する。札幌は眩しかった。光が高層ビルに反射して瞬き、道をカンヴァスに影絵を描いている。光も楽しそうである。反応する相手には事欠かない。私も今日一日、光が乱れ飛ぶ北の大都会の中で瞬き、そして影絵になる。
 方々を新幹線で飾り付けられて、札幌駅の華やぎは増している。未だ新幹線は札幌には達しないのだ。結ばれるのは十数年先のことである。しかし駅には明るい気分が広がっていた。鉄路で内地と日帰り圏内で結ばれることで図られる精神的安定、安堵感と云ったものもあろう。閉塞した北海道の景気に風穴を開ける起爆剤としての期待感もあるだろう。それはぼんやりとした無邪気さのある喜びだった。長年の悲願が遂に成就するのだと云う涙涙の重い喜びではない。
あいの里(あいのさと)

 モアイのような顔をした電車に連れられて、「あいの里公園」へと私はやってきた。ここは札幌市の北の隅っこに位置している。もと「釜谷臼」と云ったが、ニュータウン開発に伴い、駅を移転、野趣溢れる名前から無色透明なものへと変更されたものである。JRになってから札沼線には「学園都市線」と云う愛称が付けられ、専らその名で呼ばれるようになったが、釜谷臼からあいの里公園への変身は、最も学園都市線らしさを漂わせるものとなっているように思えた。


 一般的観光客には見向きもされぬこの札幌の外れにある新興住宅地にやってきたのは他でもない、北海道を代表する菓子メイカーが社屋を構えており、加えて直営店舗を設けているが為だ。住宅街の中をだらだらと抜けるとやがて太い道に出る。と、そのすぐ先に四角い顔をした御殿がそびえていた。

 北海道土産の定番でもある「生チョコのロイズ」の本拠地が、この札幌の北の隅っこだったのである。ロイズは札幌中心部のデパ地下へも出店している。しかしそこではお目に掛かれぬものがある。北海道の菓子処ではパンを取り扱っているところが少なくないことは以前にも記した。
 とあるブログを目にしていた時分に、ロイズにもパンを取り扱っている店舗があることを知った。それだけではない。そこには驚愕のパンが陳列されていたのである。それはロイズらしくもあり、デッカイドウこと北海道らしさを全身にたたえた一品でもあった。


N04-001(第69号) グテ/いちごグテ@ロイズ →

<グテ> ¥303(込)
外から見える一枚板のチョコレートだけでなく、
パンの内部にも若干ふやけた感じのチョコレートを厚く忍ばせてある念の入れよう。
口いっぱいに甘くミルキィなチョコレートがディスコ。踊る躍る。
徹頭徹尾、チョコレート三昧。
形状→★★★★★ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★★
<いちごグテ> ¥270(込)
ホワイトチョコクリームが封入されていて、
濃厚な苺味の中に甘くミルキィに溶けてゆく風味が重なり合う。
グテよりも若干派手な味わいだ。
形状→★★★★★ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★★


N04-002(第70号) 焼きそばドーナツ@ロイズ →

N04-003(第71号) パンコロッケ@ロイズ →

N04-004(第72号) バターロール@ロイズ →

N04-005(第73号) 豆パン@ロイズ →
 パンにそのまま板チョコを挟むグロテスクな姿を望み通りに見物することが出来た私は喜びに包まれていた。足を延ばした甲斐があると云うものだ。実はもっと都心部に近い所でも、ロイズのパンは手に入る。しかし札幌郊外の雰囲気に包まれるには、あいの里は鉄道の便が良く、最適なのである。ロイズを退出したのち、駅名の由来となったあいの里公園を右手に眺めながら、あいの里の住宅街を歩いた。戸建から大型マンションまで、北海道のあらゆる形態の住宅が眺められる。私にとっては見慣れた光景だが、内地の人間からすればなかなか興味深い趣ではなかろうか。北海道と云う場所は個性的でもあり、画一的でもある。
 あいの里の中心は、あいの里公園駅よりも一駅札幌寄りのあいの里教育大駅周辺である。あいの里公園から教育大駅周辺の商業施設群までは1`もない。散策するには手頃な距離感だ。

 あいの里教育大駅は、あいの里のみならず学園都市線でも中心的な駅となっているのだが、いきなりのキヨスク閉店通知に面食らった。明るい郊外住宅地も駅の仲間ではその明るさは及んでいない。些か薄暗い空間が広がっていた。この規模の駅で商売が成り立たないなら先行きが厳しいと云う感覚と、この規模の駅では商売など成り立たないだろうなと云う感覚、その両方に襲われる。北海道の中では有望であり、全国規模で眺めれば適格性に欠ける。この二重性こそ北海道が「外地」である所以なのだ。そのようなわけで駅の中はがらんとしているものである。が、そこは札幌郊外と云うことになろう。列車が到着すると真昼間だと云うのに大勢の降車客が目の前を通り過ぎていった。
新琴似(しんことに)/麻生(あさぶ)
 複線電化の高架駅。新琴似は都会の只中の趣である。駅構内の一角にとても小さなパン屋があった。位置的に見て、或いは、閉鎖されたキヨスクの後にでも入居したのだろうか。たとえ小さくとも機能的にテナントが入って賑わっている様子からは、大都会の匂いのする空気が広がる。しかもパン屋の空気は美味しい。「ベーカリーベル」とあるが、スーパーおおぞら号の車販で登場していた「お楽しみパン」製造元でもあった。

N03-038(第74号) お楽しみパン@スーパーおおぞら号車販 →
N04-006(第75号) モンブラン@ベーカリー ベル → N04-007(第76号) 豆づくし@ベーカリー ベル →
 札幌都心部まで、ここから歩く。坂の一切ない平坦な土地は、兵站にはもってこいだ。尤も、あいの里もそうだったが踊る石狩川の泥炭地は、余り強固ではなく宜しくない地盤である。
 新琴似駅は、地下鉄南北線始発駅・麻生からほど近い場所にある。が、麻生との間は地下通路で繋がっていない。札幌はJRと地下鉄の間で地盤が割れており、連絡が悪い。直接両者が繋がっているのは札幌駅と新札幌駅のみ。白石や琴似は駅名こそ同じだが、全く異なる場所にある。東京で云うところの東武線・銀座線の浅草駅と、つくばエクスプレスの浅草駅のような関係性なのである。白石や琴似に比べれば遥かに、新琴似と麻生の距離は近い。しかし繋がってはいないのだ。JR化される以前、国鉄時代は、中長距離輸送主体で今日のように都市近郊区間の輸送は顧みられていなかった。まるで別物の両者の関係性がこのような結果となったことは、至極当然であった。札幌の地下鉄はゴムタイヤ式であり、JRとの相互直通運転も不可能だ。

 1978年に地下鉄南北線が延伸されて以来、麻生はすっかり札幌北部の中心拠点となった。北区や石狩市方面のバスが集い、新千歳空港方面の高速バスも発着する。そのすぐ傍に位置しているはずの新琴似駅なのだが、2000年の高架化前は、鄙びた駅舎で人影疎らだったものである。当の新琴似の住人も麻生駅を利用しており、新琴似駅の存在など眼中に無かった。相変わらず今も、新琴似駅は、麻生と比較すれば桁違いに少ない利用客数だ。が、じりじりと麻生との差を詰めており、何よりもこの現代的な佇まいの駅は、札幌北部の拠点に恥じない威容を誇っている。

同じ地点から眺めた(上)新琴似駅方向と(下)麻生方向。せいぜい500b程度の距離である。
麻生駅周辺は、札幌北部随一の繁華街を形成する。街並みの雰囲気からして新琴似とは全く違う賑わいを覚える。
北24条(きたにじゅうよじょう)

 並行する地下鉄南北線に照らし合わせると、麻生から2駅分歩いて北24条の街へとやってきた。北24条は麻生への延伸前に地下鉄南北線の起点だったところで、北区役所の所在地でもある。麻生延伸前からここは繁華街として賑わってきた。嘗ては札幌北部の主要拠点だったがその後、市街地と都市圏は急速且つ大幅に拡大した。1960年には50万に過ぎなかった札幌の人口は、豊平町と手稲町の編入と云う追い風も手伝って、僅か10年後の70年には100万人に達していた。北24条はもはや北部の拠点とするには南に位置し過ぎなのである。ここから南は、郊外住宅地の様相から徐々に、都心部の風格を帯びるようになる。

 都心と郊外の境目として賑わう北24条に、スープカレーの店「ヴォイジュ」がある。今でこそ、この地に落ち着いているが「VOYAGE=旅」を意味する店名そのままに嘗ては、移転を繰り返す彷徨える店であった。移転前のイメージの方が、未だ記憶の中で強い。
(第1日昼食) N04-008(第77号) スープカリィ サクッとハーブチキン@ヴォイジュ →
<サクッとハーブチキン> ¥1,080(込)
 ケンタッキーのハーブチキンの趣だろうか。チキンレッグは煮込むから肉にハリが無くなって、とろける部分以上に、ぼそぼそする部分が出てしまうところに弱点がある。この部分をフライドチキン的な本品は見事に克服しており、鮮やかな風味と閉じ込められたジューシィーさが愉しめる。
 形状→★★★★☆ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★☆

大学と病院の前にあるバス停の広告が、酒の宣伝とは…凄いものだね。

 麻生から地下鉄南北線と並行する西5丁目・樽川通をずっと南下してきた恰好となったが、北18条を過ぎると、右手の景色が特徴的なものとなる。北海道大学のキャンパスが現れるのだ。広大な敷地は、札幌駅北口界隈に達するまで続く。人口200万近くを擁しながら、都心部に開拓時代を彷彿させる緑地が残る。これも札幌の面白さだ。大学構内をゆっくり散策したい気持ちもあったが、空模様が怪しい。先を急ぐことにした。結局、新琴似駅から北24条まで40分弱、北24条から30分掛かって、私は札幌駅北口に辿り着いた。
札幌(さっぽろ)

 冷涼な北口界隈は普段着のまま、いつもと何も変わらぬ時が流れていた。が、駅構内に足を踏み入れた途端に、新幹線開業の熱量が地下からも吹き上げてきて、大いに煽られる。そのギャップに、リアルな道南・函館との距離感と、か細いJRの立ち位置が投影されているようにも感じられた。函館は、札幌からは遠い。JRは、日常生活からは遠い。冷淡さと熱気の差は、紙一重のものでもあり、変化し得ない分厚さを感じさせるものでもある。それはスイッチ一つで変わるものなのか、それとも永久に続くボタンの掛け違いなのか。あの夏の全て解き放たれた狂おしい躍動と、冬の積もりに積もり頑丈に塗り固められた閉塞を見よ。北の大地はコントラストとアンバランスに覆われているものなのである。人も自然も。自然がそうであるから、自然と人もそうなるのだ。札幌は、北海道の中にあって、狂おしい。実に狂おしい都市である。

 予想通りに雨が降り、黒く濡れた闇が広がった。雨露と街の光に照らし出されて、夜空に這う電線が鮮やかに真新しい存在感を放っている。札幌の街にとってみれば、駅の中にしか存在しない新幹線開業ドラマよりも、目の前の街角を走る市電の延伸開業の方が、エポックメイキングな出来事なのかもしれない。たった400bに過ぎない延伸を巡って発生したインパクトは、鉄道の持つ意義の大きさを十分に感じさせるものだ。路面電車は、鉄道と云うよりも正式には、軌道と云う扱いになるが、バスとは桁違いの創造性を内に秘めている。レールに、車両に、人々の情念もまた宿り、そして灯される。

 市電延伸が一際鮮やかな印象を放つのは、この延伸によって西4丁目とすすきのの間の線路が繋がり、札幌を代表する伝統的商業地の狸小路に停留所が設けられ、環状運転が始まったからだけではない。道路脇を電車が走る「サイドリザベーション」は、延伸区間最大の特徴である。路面電車を利用するには、横断歩道や歩道橋を渡って、道路中央へと移動するのが常だ。これをバスと同じく歩道から直接乗り降り出来るようにすることで、利便性を大幅に向上させ、併せて人の回遊性向上を街の活性化へ繋げる狙いが、この方式の採用には込められている。その分、歩行者はもちろんのこと、道行くクルマとの接触の危険性も増大したわけだが、市電は公共交通機関である…普及させて慣れるほかあるまい。

 「狸小路」では内回り・外回りとも「サイドリザベーション」実施、「西4丁目」については内回りのみ実施、「すすきの」に関しては内回り・外回りとも未実施である。しかし大きなすすきのの交差点に線路が敷かれて、電車が横切るさまはなかなか勇壮な光景である。まるで「すすきの」と云う祝祭空間を彩る山車のような姿であった。

(第1日夕食)
N04-001(第69号) グテ/いちごグテ@ロイズ→   N04-009(第78号) 麻婆豆腐@翠心(札幌東急)→
N04-010(第79号) ホウレンソウのサラダ@サラダキッチン(札幌東急)→   N04-011(第80号) ニンジンのサラダ@サラダキッチン(札幌東急)→
<麻婆豆腐>¥584(込)


ごく普通の割と滑らかな日本的麻婆豆腐。

形状→★★★☆☆
風味→★★★☆☆
総合→★★☆☆☆
<ホウレンソウのサラダ>¥330(込)


野菜が無性に食べたくなったから
本品を購入したものだが、
確かに如何にも野菜をばりばり食べました
的なものは得られる。

形状→★★★☆☆
風味→★★★☆☆
総合→★★★☆☆
<ニンジンのサラダ>¥303(込)


人参にレーズンを絡ませる、お馴染みのパターン。
人参は薄くスライスされているから、
がりがりっとした感覚はせず、柔らかである。

形状→★★★☆☆
風味→★★★☆☆
総合→★★☆☆☆

 開業まであと3日。駅の盛り上がり具合も上々のものだったが、それ以上にテレビは、新幹線の話題一色になりつつある。マスメディアは蜃気楼の機関車である。一歩外へ出てみると冬の寒気は緩んだが、流れる空気には肌寒さを覚える。所によっては未だ雪深い。春の陽気は空転気味で力強さが等しく客車に伝わっていない様子がありありと見受けられた。街の色は、そのまま新幹線を取り巻く色へと投影されている。萌黄色一色には程遠い。所々灰色がかっている。さて明日はいよいよ道南へと乗り込む。南に近づけば、濃密に春の色を感じることが出来るだろうか。
→第1日旅程→
札幌 10:40 →札沼線(学園都市線) 普通(1539M)→ あいの里公園 11:07  
あいの里教育大 12:31 →札沼線(学園都市線) 普通(562M)→ 新琴似 12:44
新琴似 →(徒歩)→ 北24条 →(徒歩)→ 札幌
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as of 2016.03 / uploaded 2017.1111 by 山田系太楼どつとこむ

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