4憩 Shock! 新幹線がキタ!衝撃の食見聞記 -

海道幌市中央区/北区
海道町/雲町/万部町/館市/斗市- 第6
第1日 第2日 第3日 第4日 第5日
(もり)
(第6日 朝食)
N04-029(第106号) 函館牛乳の揚げパン(日糧製パン) →
N04-030(第107号) べつかい牛乳のふんわりパフ(日糧製パン) →
<函館牛乳の揚げパン>
割とおとなしめの風味でアゲアゲに揚げた感じは余り漂わない。加えて、牛乳が強調されているからマイルドな仕上がりに。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆
<べつかい牛乳のふんわりパフ>
ヴォリューム豊かそうでいて、圧を加えれば、ぷしゅーっとしぼむさまが可愛らしくもある。甘く、エレガントに乳臭い風味を放ちながら、とろけてゆく口触りは心地良い。
形状→★★★★☆ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★☆

 最終日。森の町をのんびりと歩いてみる。味わい深い、魅惑的な市街地。背後には駒ヶ岳が聳える。この町に滞在して本当に良かったと思った。八雲と森、どちらに泊まるべきか最後まで考えたものだ。函館までの近さと鉄道の要衝、駅弁の存在等で森を選んだが、それだけではない場所だった。


 八雲に比べると森市街には、まとまりがない。市街地内で拠点が幾らか分散している。厚みは余り感じないがその代わり、横に長く広がっている。森駅のすぐ裏側は噴火湾である。しかし港は隣の東森駅付近にあり、海沿いに市街地が連続している。

東森(ひがしもり)

 三角屋根の建物は、北海道では何も珍しいものではないが、東森の駅舎の三角っぷりはまた格別のものだった。駅舎もホームもそれなりに整備されてはいるが、若干漂う殺風景な雰囲気の間を縫って走る線路は、強烈にぴかぴかして輝いている。函館本線は森から先、函館方面がオラ経(渡島砂原→オしまさわラ経由)とコマ経(駒ヶ岳→コマがたけ経由)に分かれる。東森駅はオラ経に属する。原則として特急は距離が短く、観光地大沼公園擁するコマ経を走り、オラ経を走る列車は普通列車ばかり上下合わせて1日12本に過ぎない。これだけ見れば、オラ経は純然たるローカル線と云うことになろう。ところが内地へ向かう貨物列車と函館行き臨時特急は、このオラ経を走るのである。先日まで走っていた青森行き「はまなす」や大阪行き「トワイライトエクスプレス」もここを走っていた。それゆえに線路が場違い感を覚えるほどに、ぴかぴかの頑丈に整備されているのだ。


 駅の見物を終えて周辺を散策していたところ、「スパー」の案内看板が目に入ってきた。いや、懐かしい。そう云えば以前、近場に「ホットスパー」があったっけ。けれどもいつの間にか無くなっていたことを、看板の招きを受けて思い出した。

 周囲の景色からは明らかに浮いているが、強烈ぴかぴか線路とは風情が釣り合いを見せるマルハニチロの工場の先に、目指すスパーはあった。個人商店風の店構えである。昔から食料品店や酒屋だったとみえる造りだ。

 ところが店内を隈なく見回っても、置かれているのはセイコーマートの商品ばかり。スパーオリジナルのものは、まるっきり見当たらない。そこでレジに佇むマダムな趣の店員に、スパー独自の商品は置いていないのかと訊ねた。

 答えは…No! であった。スパーはセイコーマート運営会社傘下にあり、セイコーマートをやる為にスパーを導入してそのノウハウを学ぼうとしたのがそもそものきっかけなのだとマダムは答えた。そしてヨーロッパにあるスパー本社にのれん代を払うメリットが最早薄れた為に早晩、スパーは廃止される公算であるとも付け加えた。それではなぜ「本流」セイコーマートではなく「傍流」と化しているスパーを選択しているのか。マダムに拠れば、スパーは本部からの縛りが緩く、他社商品が置けたり、法事等で店を閉めることも可能なところが良いのだそうだ。個人商店の延長線上でやれるコンビニだったわけである。
(もり)

 繁栄の面影と鄙びた風情が同居する森市街は、水陸双方による絶妙な味付けが施されている。この街並みをじっくりと堪能した葦は、いつしか森駅へと到達した。ちょうど昼時を迎えている。観光化されていない道南の味を再び愉しむこととしようか。
(第6日 昼食)
N04-031(第108号) シーフードトマトドリア@ピザ テン.フォー →
N04-032(第109号) テン.フォー プレミアムアイス ダブルチーズ@ピザ テン.フォー →
<シーフードトマトドリア S> ¥864(込)
「峠の釜めし」のようと云ったらちょっと大袈裟だが、重厚な容器の中で本格派の薫り漂うドリアである。実際のところ、フレッシュにして濃密な味わいで無理なく盛られたモルネーソースに嫌味は無い。
形状→★★★★☆ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★★
<テン.フォープレミアムアイス ダブルチーズ> ¥270(込)
ダブルチーズと云うほどにはダブってはいない。ゆえにダブルとは云わずに、トリプル、クアドループル目指してダダンと攻めて貰いたい。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★☆☆

 出発が昼過ぎになると何となく今日一日もこの地に滞在するかのような感覚に襲われる。が、別れの時はやってきた。こんなにも心打たれる景色広がるところだとは思わなかった。森と云えば「いかめし」と云うイメージしかなかったようなものだ。しかしその原点に再び返るならば、あの素晴らしい駅弁が誕生した町だけあると云うものだった。魅惑的だ。イカしている! さらば、海に育まれ、山の麓で根を広げてきた森よ。
新函館北斗(しんはこだてほくと)

 2日ぶりに訪れた新函館北斗駅は、相変わらず賑わっていた。開業3日目、あの歴史的一日のような狂った人出は見られないが、まだまだ勢いに満ちている。

 この新幹線新駅で最も心惹かれたのが「BENTO CAFE 41°GARDEN」と云う店である。ニュース番組でも紹介されていた。ケースの中の御飯ものやおかずを組み合わせて、自分好みの弁当に仕立て上げることが出来ると云うのが売りだ。当然ながら2日前はソ連末期の国営商店の棚のようにすっからかんだったが、今日は何とか、そこそこ残っている感じだ。

 しかしどうも、これから新幹線に乗って内地へと戻るのだと云う特別な感傷、のようなものが湧き上がってこない。ただただ、寂しさが込み上げてくるのは何故だろう。
 …恐らくはこの駅のせいだ。確かに面倒な手荷物検査を受けることなく、すんなりと入場して乗車へと至る流れは、流石は鉄道、正しく新幹線だ。だが市街地とは距離があるから、窓の外から見える景色が空港から眺めるものと殆ど変わらない。駅の中に街の匂いが漂わない。だから、いつも飛行機で北海道から内地へ戻る時分同様の気分に襲われているのだと思った。

 新幹線の車内に足を踏み入れても、新鮮さは無かった。本当はJR北海道の車両・H5系に乗車したかったのだが生憎チケットが取れずに、JR東日本車利用と相成ったからである。グランクラス利用も3回目と云うことになる。車内の雰囲気は飛行機そのものと云った趣で、椅子と窓が、ごつい。

 静かに走り出した新幹線は忽ち俊敏性を増してゆく。それも滑らかに。これが新幹線の素晴らしさだ。車窓からは遠くに点のような五稜郭タワーや函館山も望むことが出来た。が、しかし、周囲が田園風景の割に、壁が視界を遮ってきて満足に車窓を愉しむまでには至らない。急曲線で思いの外、騒音が発生するのか、或いは強風・雪害対策か。いずれにせよ残念極まりない。スケルトンなものにでも交換して、視界確保といきたいものだが。

 グランクラスをチョイスしたのは、単純に長い旅程を終了して疲れているだろうから、と云う部分も無論あるが、オリジナル軽食メニューを味わいたかったからである。JR北海道車に乗れなかった以上、今回刷新された軽食にありつけなかったとしたら、北海道新幹線に乗った意味が殆ど無くなってしまうではないか、と云う思いに憑りつかれたのだ。
(第6日 八つ)
N04-033(第110号) 洋軽食@北海道新幹線はやぶさ号グランクラス →
<北海道新幹線グランクラス洋軽食>
本品は、サンドウィッチ・ホタテのレモンペッパー焼き・果物の三部分により構成されている。サンドウィッチはタマゴサンドと岩手県産ベーコンのポテトサラダサンドである。ポテト・コーン・人参・玉葱は北海道産で、青函・東北北海道直結をアピールする内容となっている。「函館みかど」は函館の駅弁業者だが、通常の駅弁業者の作るサンドウィッチよりも風味が良い。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆
N04-034(第111号) グランクラスオリジナルパウンドケーキ 早春〜いちご〜 →

 青函トンネルを抜けて新青森に到着し、北海道新幹線の区間は終了した。相変わらず滑らかな走りである。それはしかし、新幹線ならではのものであると共に、新幹線らしからぬ低速運転を強いられているからでもある。在来線特急時代には最も飛ばしていた青函トンネル内が、新幹線開業後には最も抑えて走る区間へと変わってしまったのは、何とも皮肉な話だ。貨物列車が新幹線の風圧のせいで脱線転覆する可能性をトンネル設計・建設時にどう評価していたものか。昔の日本人なら、あらゆる想定の下、余裕を相当持たせたものを作りがち…なのだが。それを「無駄」と断じたところから社会の綻び、国家衰退への序章が切って落とされる。

 新青森の駅からは青森中心部の様子を容易に望めるところが「新函館」との大きな違いである。しかし高速化と云うものは途中を省略する営みでもあるから、南北問題ならぬ南南問題のように、地方間格差、都市間格差がより浮き彫りとなるものだ。青森も、函館も、新幹線を札幌へ延伸させる為に、壮絶なる犠牲を強いられている。

 その点で八戸と云う町は、先駆的なところがある。八戸の新幹線駅は在来線の八戸駅に併設され、新たに「新八戸」駅は誕生しなかったのだが、在来線八戸駅は元々、尻内駅を名乗る八戸郊外の駅で、事実上の「新八戸駅」だった。八戸中心部へはここから支線が延びて本八戸駅が設けられている。八戸はまた、2002年から10年までの間は東北新幹線の終点であり、終点効果の醸成と持続の観点からも青森・函館にとって良い教師となろう。

 ここが新幹線駅かとびっくりした記憶が今でも鮮明ないわて沼宮内駅を過ぎて、車窓に都会感が出てくると、車内も少しそわそわしだしてくる。次の盛岡駅では有名な儀式が執り行われており、ホーム上からもそれを検分することが可能なのだ。
(第6日 夕食)
N04-035(第112号)
チョイスで楽しむcafe ben.@新函館北斗駅(BENTO CAFE 41°GARDEN) →
N04-036(第113号)
カニがたっぷりのカニコロッケ+あまーいコーンぎっしりコーンコロッケ+香り高い八雲産男爵のコロッケ@新函館北斗駅(BENTO CAFE 41°GARDEN) →
<チョイスで楽しむcafe ben.> ¥1,110(込)
チョイスしたのは、「カニSushiヨンイチスタイル」(¥530込)と「道産モッツァレラチーズのカプレーゼ」(¥580込)。付属のドレッシングを掛けると、味がねっとりと引き立って、サラダ感覚からライトミールに毛が生えた趣へと進む。飽くまでもマイルドでワイルドさは無い。
形状→★★★★☆ 風味→★★★★☆ 総合→★★★☆☆
<香り高い八雲産男爵のコロッケ> ¥180(込)
他に何もないポテトオンリーのコロッケ。しんしんと白く降り積もる。カニはイマイチだったがコーンのコロッケがあんなにも美味しかったのは、やはりベースとなるジャガイモの美味しさがあってのこと。ホクホクしていると云うよりも、上品にクリーミィに、ジャガイモが風味を伴って広がってゆく。
形状→★★★☆☆ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★★

 この旅の始めに、中標津の標津線跡を眺めた際、鉄道と云うものは川なのだと私は感じた。そして旅の終わり、東京駅で見事に隣り合って並んでいる野太くも、しかし、しなやかに流れる新幹線の車体を見た時に「ああ、大河に揺られてここまでやってきたのだ」との思いが募った。文明の大河の上に浮かべる舟は、肉の足ではなく、考える葦になっていた。
 川はやがて、海へと至る。蝶のように舞う夜の眩い光の海に抱かれる時分に、東京へ戻ってきたのだと云う気分に襲われる。或る人にとっては夢の東京の瞬間が、また或る人にとっては、現実に触れて夢から醒める瞬間でもある。夢と夢の間でくらくらと眩暈を起こしながら私は、私の家路へと急いだ。私だけの夢路を愛おしく思いながら。
→第6日旅程→
森 13:55 →函館本線 普通(4834D)→ 新函館北斗 14:55  
新函館北斗 15:35 →北海道・東北新幹線 はやぶさ28号(9028B/3028B)→ 東京 20:04
←第5日へ←  6  

旅の中で遭遇した食物の内、本文中では触れられていなかったもの
N04-037(第114号) ロイヤルスイート(ロバパン) →
N04-038(第115号) ちぎりパン ピザチーズ(セイコーマート/札幌パリ) →
N04-039(第116号) りんごのパイ(セイコーマート/札幌パリ) →
N04-040(第117号) The 豆パン(ロバパン) →
N04-041(第119号) チーズ蒸しパン ロングライフver.(日糧製パン) →
N04-042(第120号) 金時豆ケーキ(セイコーマート/札幌パリ) →
N04-043(第121号) 北海道新幹線どら焼き(わかさや本舗) →
N04-044(第122号) しっとりブレッド 北海道牛乳(日糧製パン) →
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as of 2016.03 / uploaded 2018.0109 by 山田系太楼どつとこむ

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