7憩 ート371 -東海道鰻遊記-

岡県津市/川市- 第2
(第1日)
沼津(ぬまづ)

(第2日朝食)
 2日目の朝。目が覚めたら美味しい匂いが立ち込めていた。焼き立てのパンの匂いだった。色んなホテルに宿泊してきたが、こんなことは初めて…とてもスメルな目覚まし時計である。結局、寝床から這い上がることがすぐには出来ずに、朝食会場へと向かうことなく、町田駅の売店で昨日買っていた「丹沢あんばん」を朝食代わりにしたが、明日は是非ともこの焼き立てパンを賞味したいと思った。
 昨日巡った場所は全て、駅南口方面だった。そこで今日は北口方面を歩くことにした。南口はいわば旧市街、北口は新市街である。何年も前から沼津では鉄道高架化事業が持ち上がっているが、貨物駅や車両基地の移転が難航して一向に実現しない。沼津駅構内は「あまねガード」で抜けることが出来るのだが、集中豪雨時に冠水した際、強引に突破しようとした車が水没する事故も起きている。
 北口界隈には南口ほどの雑然とした趣はないが、その分、賑わいに欠けた雰囲気であるとも云える。しかし北口界隈にも商業施設は集積しており、加えて国や県の出先機関も少なからず設置されている。
 南口が駅と港によって発展したものとするなら北口のそれは道路交通である。バイパス化された国道1号線、更には東名高速の沼津インターが控えている。北口のメインストリートであるリコー通りも駅から500mも離れると郊外色に彩られるようになる。「リコー」の名からも分かるように、この北口方面には多くの工場が立地している。オフィス街を除くと次第に観光頼みとなっている南口方面とは対照的に、沼津の経済を引っ張っている感覚がより現役感を伴って吹き抜けているのが、この北口方面なのである。鉄道高架化が実現して南北の往来が今よりも容易になった折には、南口から北口への人や企業の流れが加速することになるであろう。
 南口を出発した散策の終点は沼津港だった。北口はどこが良いだろうかと考えていたら、ちょうど良さそうな塩梅の位置に「明治史料館」なる施設があったからここに決めた。国道1号沿いの場所にあり、新幹線の線路にも近い。
 この史料館には「江原素六記念館」の別名が与えられている。江原は東京の麻布学園の創立者としても知られる。旧幕臣と云う関係性から沼津に移り住んで当地の近代化に尽力した彼もまたキリスト教信徒であった。日本各地でキリスト教精神が近代化を底辺から推し進めたさまが、ここでも窺えると云うものである。
 史料館からの帰り道、車両基地沿いの道にぶつかると、371系が休んでいる光景に遭遇した。特急車両が停まっているとやはり華やかな雰囲気が出てくるところだが、この景色も3月のダイヤ改正までなのかと思うと何か寂しい気分になった。

(第2日昼食)
N07-005(第195号) 港あじ鮨@沼津駅(桃中軒) →

N07-006(第196号) ラザニア@バッカスのへそ(沼津西武) →
<港あじ鮨> ¥880(込)
鯵×鮨×駅弁と云えば、大船軒の「鯵の押寿し」が有名だが、あちらは全て同じものが入っている。対する沼津・桃中軒のものは、わさび葉・紫蘇の葉・太巻きと3種類も入っていてヴァラエティに富む。これは最後まで飽きさせない。鯵にはやはり臭みがあり、これを打ち消すために酢の風味がかなり強くなりがちだ。しかし中でも気に入ったのは、中央下、わさびの葉で包まれて、更には鮨めしにもわさび茎の塩漬けにしたものが混ざっているもの。実はこれが一番マイルドな仕上がりで、わさびを使っているにも関わらず、新宮駅弁の「めはり寿し」よりもパンチがないほどだったのは意外であった。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆
<ラザニア> ¥400(込)
非常に分厚いラザニアである。このヴォリューム感、RF1がお上品ぶっているだけの手抜きにすら見えてくる。見た目だけでなく中身もしっかりと、どっしりと構築されている。味付けもそこまでくどいことはない。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆

N07-007(第197号) おかみさんが作った戸田塩じぇらーと(柚子庵) →
 沼津一の商店街・仲見世の夜の帳の下りたさまは、華やかでもあり、スケスケのスカスカでもあった。ちらほらよりも少々、人の通りはある。さながら散会した宴のような浸透圧に覆われていた。
 仲見世の奥には新仲見世があった。新しいのに仲見世よりも古びて見えた。本館の隣に新館が出来たものの、そのまま老朽化が進んでいる内に本館に手が入って新館の方が古くなることは、しばしば起こる事態である。古くなった新しきものほど辛いものもないだろう。私から見れば、とても味わい深いものに映るのだが。

N07-008(第198号) さくさくパンプキン@ドンク(沼津西武) →
(第2日夕食)
N07-009(第199号) 伊豆龍馬飛翔会席膳@沼津駅(桃中軒) →
伊豆龍馬飛翔会席膳 ¥980(込)
洒落た一面を持っていた龍馬の如き洒落たつくりになっている。金目鯛の酒蒸し・鶏つくね焼き・鰹の昆布巻きに存在感。そしてわさびもたっぷり、これが桃中軒。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆
→第2日旅程→
終日沼津市内滞在  
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