8憩 初の広い島の山と海-

島県次市/庄原市/島市/山市/三原市/岡山県笠岡市- 第1
 2012年の2月の終わり、私は羽田に居た。2週間後に迫ったJRのダイヤ改正にて、西日本の列車が軒並み削減されることとなった。中国地方では通学時間帯終了後昼過ぎまで列車の運転が取り止めになる区間が出現する。以前から中国山地に関心を抱いていた私は、それならば容易に移動することの出来る間に行ってみるしかなかろうと思い立ったのである。
 西日本へ向かうには当然ながら、羽田離陸後に東京西部上空を通過することとなる。普段、北海道行きの時分には千葉と北関東しか通らないだけに、身近な東京西部をリアルな地図のように眺められることは、格別の爽快さを伴う。多摩ニュータウンも、八王子も、地図で見た通りの世界が広がっていた。

(第1日昼食)ボックスサンドミックス(JALUX NFD)@羽田空港第1ターミナル売店
広島空港(ひろしまくうこう)
 広島空港に降り立ったのは二度目となるが、やはりこの空港には独特の雰囲気がある。山の上に浮いている感覚がするのだ。「山海」とはよく云ったもので、山が海のように広がっていて、峰々が島のように顔を出す。だから海上空港に居るような趣がしてくる。長崎空港に似た雰囲気だ。しかしやはりここは山である。着陸時には周りの峰に激突しやしないものかと肝を冷やす。
 広島空港から広島都心部へは通常、リムジンバスを利用することになろうが、私の場合、バスはバスでも最寄駅・白市へ向かうバス。車両も通常の路線バスそのものである。
白市(しらいち)
 白市は中山間地域にある小駅と云った雰囲気だが、駅前には広々とタクシー待機スペースが伸びていている。しかし周囲の雰囲気に埋没して長閑な光景に堕している感は否めない。この様子からすれば嘗てはそれなりに空港玄関駅として機能してはいたのだろう。が、山陽本線で快速電車が全廃され(西条から広島までノンストップだった)、他方2006年に山陽道と広島都市高が結ばれたことにより、リムジンバスの速達性もまた増しただろうから、この駅を使う空港利用者は相当数減ったはずである。第一、対東京での航空機シェアが、近年は新幹線に押されて低落の一途なのである。新幹線と高速バスに食われる在来線の構図がここでも見え隠れする。
広島(ひろしま)
 白市から山陽本線を利用したのは単にリムジンバスに乗りたくなかったからではない。広島は最終目的地ではなく、芸備線で三次へと向かうからである。それなら、予め列車に乗り込んで広島に到着した方が乗換等、楽に動けるだろうと踏んだのだ。
 広島駅構内では天満屋閉店を伝える広告が大きく掲出されていたのが印象的であった。八丁堀には三越・天満屋・福屋と3つの百貨店が並び立ってきたものだ。マツダスタジアムの開場等、広島駅周辺の再開発が活発化している。広島都心部…紙屋町・八丁堀地区…の繁栄は、今一つパッとしてこなかった広島駅周辺の状況に助けられてきた側面があった。無論、郊外は急速に発展してきているわけで、今後は厳しい場面も増えてこよう。
 芸備線に乗り込んだ私は、初めてとなる「山陽路以外の広島」の景色をぼんやりと、しかし興味深く眺め続けた。今までの広島は、如何に山に囲まれていようとも、海の薫りの届くランドスケイプだった。しかし今や、独創的な中国山地の風景が眼前に次から次へと展開している。
三次(みよし)
 広島を出発した折には混んでいた列車も終点の三次に着く頃には、がらがらだった。もう少し賑わっているのかなと思っていただけにこれは意外なことであるように感じられた。それと云うのも、私にとっての三次のイメージは名寄だからだったからだ。三次駅は、宗谷本線に於ける名寄のような存在と思っていたばかりに、殊の外、三次到着前の車内の様子が閑散としたものに映った。
 三次の人口は5万人台半ばだが、平成の大合併前の三次の人口は4万弱である。名寄の人口が2万半ばから3万と云うことを考えれば、格段に大きな町となろう。とりわけ高層マンションが存在するのは驚きであった。中心市街地は密集した趣に包まれ、大型商業施設も複数存在している。内在する爆発力では名寄を凌ぐものがある。しかし市街地の威容、重厚さの点では名寄に軍配が上がるように感じられた。北海道の市街地は計画都市だけあって、と云うことだろうか…人口の割に非常に立派に構えているのである。三次はぐしゃぐしゃっと密集・湾曲していて、貧相なのだ。その分、スカスカになっている感じは漂ってこないのだが。
 やはりここは広島だ。マツダの存在感は相当に感じる。ホテルにもマツダ御一行様歓迎の掲示が為されていた。実は三次にはマツダの工場やテストコースがある。
 それにしてもこのホテル、表通りからかなり奥まったところに位置している。手前側にパチンコ店、パチンコ店とホテル共用の駐車場棟、そしてその横にはラーメン店と云うエキサイティングな配置となっている。歩行アクセスの場合、駐車場棟脇…と云うよりもラーメン店駐車場すぐ脇の狭いスペースを伝ってホテルへ向かうことになる。
 お楽しみのNHK地域ニュース番組を眺めつつ、天気予報では、三次ではなく隣町の庄原が広島内陸部の雄となっていることを認識する。備北(=備後地方北部)の中心都市は三次だが、より奥に位置する庄原の方が気象的特徴は捉えやすいであろう。寒さは抜きん出ている。明日は雪…しかし東京まで雪とは。ここはどれだけ積もることになるのか。
(第1日夕食)
N08-001(第214号) 花畑牧場ホエー豚のロースカツサンド@羽田空港第1ターミナル売店(花畑牧場) →

N08-002(第215号) 賀茂鶴の酒粕あんぱん(タカキベーカリー) →
N08-003(第216号) しゃもじかきめし@広島駅(広島駅弁当) →
<花畑牧場ホエー豚のロースカツサンド> ¥780(込)
一時ほど聞かなくなったが十分に有名な花畑牧場。ホエー(乳清)はチーズ作りの時分には発生する代物だから有効活用である。しかしホエー豚の柔らな趣はイマイチの感。そしてもう少し肉厚若しくは幅広を期待したいところ。ソースにも鮮やかな風味皆無で、それなりに食べさせる部分もあったが、若干の期待外れ。
形状→★★☆☆☆ 風味→★★☆☆☆ 総合→★★☆☆☆
<賀茂鶴の酒粕あんぱん>
流石に木村屋的なあんぱんよりも、酒の風味は強烈。タカキベーカリーでは相性の良い飲み物を指定する趣向を持っているが、確かに緑茶とまったりと合ってきそうな趣。濃い感じがする。酒粕のお蔭で、餡も生地も。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★★☆
<しゃもじかきめし> ¥1,050(込)
しゃもじの持ち手のところまでびっしりと具が詰まっているところなど、そしてそこに広島菜漬けが宛がわれているところなど、非常に機能的且つ感動的な光景に映る。しかし個人的には余り広島駅弁との相性が芳しくないのだ。それは味付けが濃いこと、風味がどうも硬いことに因る。この名物駅弁にしても、ヴォリューム的にも口当たり的にも申し分ない満足感が得られる一方で、逃げ場のない感覚に襲われる。何かデザート的なものが一品加わるだけで、だいぶ違う様相になるようにも思うのだが。
形状→★★★★★ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★☆☆
→第1日旅程→
羽田 11:45 →JAL1607→ 広島 13:15  
広島空港 13:35 →芸陽バス→ 白市駅 13:49
白市 13:56 →山陽本線 普通(355M)→ 広島 14:41
広島 15:00 →芸備線 普通(1864D)→ 三次 16:51
1 →第2日→
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