8憩 初の広い島の山と海-

島県次市/庄原市/島市/山市/三原市/岡山県笠岡市- 第5
三次(みよし)

(第5日朝食)
N08-007(第220号) クリームパン(沖田製パン) →
 
 最後の三次は晴れやかな天候になって送り出してくれた。三次、そして西城と初めての中国山地滞在は、これにて終了となる。三次は山地帯への入口なのだと云うことがよく分かった。西城を目の当たりにすると三次市街に山地帯の雰囲気は余り無い。山陽と山奥との結節点の様相であった。
 川沿いに展開される僅かな平地の帯に全てが凝縮される生活空間の縁を舐めるように列車は進んだ。広島市内に入ってもその基本構図は変わらない。三次出発時にはがらがらだった車内も甲立、向原と安芸高田市内を、更には広島市内に入って井原市、志和口と進むにつれて、賑やかになっていった。日中の三次発の列車には広島まで行かずに途中の狩留家止まりのものが設定されている。狩留家からは広島都市圏輸送の範囲内と云うことになるのだが、そんなことは微塵も感じさせない長閑な景色が展開される駅である。高陽ニュータウンの玄関口となっている下深川から先はマンション等が林立する都会的な景観が広がるようになる。しかし迫りくる山並みの近さ、狭隘な平地の連続は、広島ならではのものである。広島と云いながら少しも広くない。本当に狭い。
広島(ひろしま)
 4日ぶりの大都会の色は、メニエールだった。デルタ地帯以外は山ばかり、これが広島の特色である。山が開けていきなり都会の穴倉へと放り込まれた心地がするのだ。それは暫しの放心状態をもたらして余りある。しかし兎にも角にも、空腹に襲われているのだ。早速、駅ビルへと向かった。

(第5日昼食)
N08-019(第232号) 釜飯カキフライ膳@酔心(広島駅アッセ) →
<釜飯カキフライ膳> ¥1,500(込)
カキの貝殻の中にソース2種を仕込む凝り様。釜飯は可もなく不可も無く。ここの釜飯が…と云うよりも、釜飯自体が割と地味な料理であり、もう少しガツンと行きたいところだが、カキフライがあるからバランスとしてはマァ、取れている。濃い味の味噌汁が花を添えてもいる。
形状→★★★★★ 風味→★★★★☆ 総合→★★★★☆
 広島の中心部は、駅から少しばかり離れている。が、今日のような晴天の日には、問題無く歩ける距離だ。八丁堀に辿り着くと奥から福屋、天満屋、三越と3軒もの百貨店が連ねるさまが視界に飛び込む。これぞ大都会、なかなか壮観なものである。しかし真ん中に位置する天満屋は明日、百貨店としての営業に幕を下ろす。
 広島での宿泊先は「東急ビズフォート」にした。昨年、東急インだった時分に宿泊したところ、とても良かったからである。東急インは繁華街に立地している場合が多いから街の雰囲気に浸るには好都合でもあった。リニューアル・リブランド化したのは当然、予約する際に知っていたが、幾らシャワーに凝っていても、風呂にはやはり敵わない。一日の終わりには風呂に浸かりたいものだナァと思わずにはいられなかった。
 広島の街を歩くのはもう3回目になる。すっかり歩き慣れてきた。福岡や札幌と比較して小ぶりな印象だが、その分、兎に角、密度が濃いのだ。加えて都心部と周縁部の境界が曖昧で、渾然一体となっているきらいがある。ここが広島の街の面白いところなのである。ホテルの前を走る平和大通り、そして路面電車の走る相生通りと二つの東西軸が並行している点もこの街の独特のバランス性と云うものを構築することに一役買っている。歩行者目線に立つなら、ここに本通も加わることとなろう。広島界のパンの重鎮・アンデルセンが本店を構えるアーケードである。
 そのアンデルセン本店からは八丁堀よりも紙屋町の方が近い。紙屋町には路面電車の他に新交通アストラムライン、そして何よりも巨大なバスセンターが「そごう」の上にあり、一大交通結節点となっている。また、八丁堀と並ぶ繁華街でありながら、県庁や広島銀行本店、更にはつい先日まで市民球場も立地しており、凝縮された広島の都心部の象徴的存在である。
 タッチパネルの券売機がずらりと並んでいたり、乗場のことをホームと称していたりと、駅さながらの雰囲気の広島バスセンターから郊外行きのバスに乗り込む。座席も普通の路線バスの割にゴージャスに見えた。流石は基幹路線…都心と期待の郊外開発地との間を、都市高を経由してダイレクトに結ぶバスだけある。イメージとしては福岡の天神とシーサイドももちを結ぶ西鉄バスと云ったところか。あちらは臨海、しかしこちらはさながら「臨丘」「臨山」である。
 都市高に乗り、すぐに太田川を渡ると、そこはもうトンネルとなる。山が近い、デルタにしか目ぼしい平地のない広島の地形が切り立って迫るのを感じながら、バスは快調に飛ばした。トンネルから出る…とそこはとんでもなく田舎なのであった。その余りのギャップには驚くばかりである。じきにバスは厳重に山に囲まれながらも、計画的な都市の風景の中へと入っていった。目的地に到着である。
西風新都(せいふうしんと)
 西風新都はその名の通り、広島都心の西北に位置するニュータウンである。戸建住宅、高層集合住宅の他に、産業団地と称する区域もあり、物流系の企業が多く存在する。都心部との間を結ぶ都市高に加えて、付近を山陽道と広島道が通っており、道路交通至便な土地柄を反映している。この西風新都の大半は安佐南区に属している。広島でも郊外の人口減が始まっているのだが、安佐南区については例外的に、かなりの人口増が続く。その一翼をこの西風新都が担っているわけだ。
 西風新都は幾つかの街区によって構成されるが、その中心となるのが高層住宅立ち並ぶ「A.シティ中央」である。1994年に開催された広島アジア大会の舞台となった広域公園にも程近い。西風新都自体の開発が未だ全くの途上段階であることに加えて、周囲の山並みに勇壮なものがあるから、全体としては、虚ろにのんびりとしている空気が漂う。局地的には物凄く都会的な光景が広がってはいるのだが。
 往路はバスだったから、復路は鉄道を利用しようと決めていた。鉄道とは云ってもレールの無い新交通システムだが。この大塚駅は新交通システム「アストラムライン」西風新都最寄駅となっている。が、しかし、都心からアストラムラインを使って西風新都へ向かう人は殆ど居ない状況だ。それは往路に使った都市高を走るバスの存在にある。途中の山をトンネルでぶち抜き、最短距離で結んでいた。これに対してアストラムラインは、山をぐるっと迂回する経路で走っている。これでは所要時間の面で全く勝負にならない。バスで15分余りのところを実に倍以上となる30分以上を掛けて向かうことになる。アストラムライン沿線には他にもニュータウンが広がっている。が、しかし、対西風新都に於けるバスとの競合と苦戦が、経営に影を落としている面は否めない。
広島(ひろしま)

N08-020(第233号) パンプリン(広島アンデルセン) → N08-021(第234号) パンナコッタとラズベリームース(広島アンデルセン) →
N08-022(第235号) もみじ弁当@広島駅(広島駅弁当) → N08-023(第236号) 幻霜ポークミルフィーユカツサンド@広島駅(広島駅弁当) →
<もみじ弁当> ¥1,050(込)
広島駅の幕の内弁当である。穴子や蛸も入り、ご当地感を演出。因みに穴子は寿司になっている。他のおかずも揃い、幕の内として申し分ない内容。ただ、広島駅弁はどうも硬い趣のする味わいである。見栄え的には中々素晴らしいものがあるのだが。
形状→★★★★☆ 風味→★★★☆☆ 総合→★★★☆☆
<幻霜ポークミルフィーユカツサンド> ¥680(込)
「幻霜」と云う名前通りに脂の多い豚肉、それを更に薄っぺらくして揚げているのだから、ただ脂っぽい代物が出来上がる。しかも抜け殻のような肉はカッサカサになりがち。ベーコンのようでもあり、しかしベーコンの、推理小説のような風味は無い、普通の豚肉。ちゃんとしたカツサンドが食べたい。
形状→★★★★☆ 風味→★★☆☆☆ 総合→★☆☆☆☆
→第5日旅程→
三次 11:14 →芸備線 普通(4863D)→ 狩留家 12:18
狩留家 12:20 →芸備線 普通(3847D)→ 広島 12:59
広島バスセンター →広電バス→ こころ西公園
大塚 →広島新交通1号線(アストラムライン)→ 本通
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as of 2012.03 / uploaded 2018.0428 by 山田系太楼どつとこむ

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