舌自心→ 
舌は自ずと心をつくる
(N03-025 第56号)
エスカロップ ::どりあん::
うら寂しき最東端の街に花咲くニュー娯楽食文化 第4日 にて遭遇
 「どりあん」は根室中心部ど真ん中にある。斜め向かいにはイオン。街路は洒落たつくりとなっていて少し日本離れした景観だ。ロシア極東に近い趣が漂う。そしてどりあん自体もお洒落な店構えに店内風景である。根室に到着して最初の食事をここで摂ったのだが、もっと茫漠とした雰囲気、或いは昭和の雰囲気を想像していたから実に意外なものとなった。ここから始まった根室の食を巡る風景は実に豊かで多彩なものだった。根室の豊かな海はロシアに閉ざされていても、どっこい食卓のヴァラエティさは何ら影響を受けず。独自の文化は閉ざされた場所でこそ育つことを考えれば、根室の繁栄と云う視点に立てば実に皮肉なものだが、ロシアが海に蓋をしたことが独特の食文化を醸成させた面も少なからずあるだろう。









エスカロップ ¥870(込)


現代根室食文化の真打ち登場。様々な根室の味を堪能したのち、
遂にエスカロップに辿り着き、これを食してみると感じ入る部分もまたひとしおだ。
この料理は根室の特徴をとても良く反映しているものだなと実感させられる。
エスカロップはとんかつを使用している。がっつりとイケる一品である。
しかしながら滋味深く刻み筍を混ぜた軽やかなバターライスが基盤として寄り添う。
外観から込み上げる情感よりも存外、あっさりさっぱりとしたものなのである。

現在流通しているエスカロップは通称「白エスカ」と呼ばれてもいる。
エスカロップ誕生時はしかし「赤エスカ」と呼ばれるものが主流だった。
バターライスではなく、ケチャップライスを使用していた。だから、赤い。
しかし「赤」は反ソ反共的思想背景とは全く無関係に、
ただただ人々の舌の嗜好性の問題から敬遠され、駆逐されていった。
デミグラスソースの掛かったとんかつとケチャップライスは、
如何にもド派手な味わいとなり、
マイルドな根室の食卓性にそぐわなかったのだ。

「やきとり弁当」も、「スタミナライス」も、「オリエンタルライス」も、
根室の食風景は皆、マイルドで軽やかな料理の仕方であった。
赤エスカが駆逐された理由は、舌で納得させられた。
明らかに根室の味は漁師町のそれではない。神戸や横浜等貿易港のそれである。
実はエスカロップ、考案者が横浜のレストランに勤めていた経歴を持つ。
しかしその「都会の味」が日本の極東と極北の果ての街で受け容れられた。
エスカロップだけではない。
他の名物料理からも、都会的な味わいがしてくる。
最果ての地に都会の食文化が花咲いている。
根室を食べると満たされるのは腹だけではない。
胸もまた、つくづく不思議な気分に満たされる。

形状→★★★★☆
風味→★★★★★
総合→★★★★★

どりあん
時:08:00-21:00
休:火曜
処:根室市常磐町2-9 地図→
電:0153-24-3403

食べログ→










「憩」舌自心 INDEX →
うら寂しき最東端の街に花咲くニュー娯楽食文化 第4日 →

as of 2016.03 / uploaded 2017.1021 by 山田系太楼どつとこむ
©山田系太楼 Yamada*K*taro