あの「大組閣」から4年…新体制移行を以て遂に大組閣時代は一つの区切りを迎えて過去帳入りすることとなった。今のAKBは2020年東京五輪後の日本を先取りしているのかもしれぬ。


大組閣の評価は二つに大きく分かれることになろう。AKBのグループ化、更なる拡大にこの大組閣は大きく寄与した。また今日の乃木坂46の隆盛にも大きな貢献を果たした。乃木坂の知名度の広がりと共にAKB系からファンの移動が起こったからである。しかしこの大組閣を境に本店の弱体化が急速に進んだ点もまた否めない。結局、AKBグループ自体の人気は拡大せずに、限られたファンが各支店や乃木坂へと分散してしまったのである。

(チョコラ DDチャンネルから)
新しい葡萄酒は新しい革袋に…ではないが、一旦ハコとして衰え出したものを押し戻して前のようによみがえらせることは非常に難しい。同治の中興は、明治維新のようには行かなかった。新しいものは新しいハコに入れる…その点で秋元康がAKBを見限って坂道シリーズを創設したことは正しい一手なのだ。しかし中興の祖としてうまくやるには、それがかなりのよみがえりのような状態となるには、「乗っ取り」のような形態が一番となる。例えばコ川吉宗の享保の改革は、幕府三大改革の中では最も成果を収めた。


幕府が長持ちしたのは吉宗のお蔭だ。また世界情勢に乗り遅れなかったのも吉宗が鎖国政策を一部緩めたお蔭だ。吉宗はコ川幕府を合法的に乗っ取り、その中身を変質させていった。同じコ川幕府、江戸時代ではあるが、吉宗以前と以後では実質的に別物となっている。


そのことを鑑みるなら、8による乗っ取りが本店復活、ひいてはAKBグループ全体の活性化には最も良い一手と云うことにはなるだろう。そのためにも岡部や小栗・倉野尾だけでなく、周りに居る吉川七瀬や小田えりな、或いは坂口渚沙、佐藤七海、永野芹佳と云った面々の伸長も必要となろう。いずれにせよ、8と本体との融合を目指しては意味が無い。折角のチャンスも失敗に終わる。如何に8による本体乗っ取りを徹底化させるか、その深度によって本店、そしてAKBグループ全体の命運は少なからず代わってくるのである。



それにしてもAKBの運営って何のために居るんだろう?と云う疑問が浮かぶとすれば、それは当然の成り行きなのかなとは思う。8はトヨタ後援で、メンバー採用に当たっては、各県のテレビ局が主体的に関与しており、総じて運営の関与の度合いは薄いから「ドレスコード」が保たれてきた。またここのところ本店メンバーの個人仕事も増えてきているが、これは事務所への移籍がこのところ再び盛んになってきたことによる。つまり運営が、と云うよりも各事務所が売るために頑張った側面が強い。

或いは、AKBの握手会は坂道の握手会よりも、よく整備されたものとなっていて、比較的評判の良い状態となっているが、これも運営の努力による部分よりも、キングレコードの手腕によるところの方が大きかろう。ますます運営の存在意義や価値に対する疑問が湧き上がるのも、自然な流れではあるなと思うものである。


第5話 はじめに

 2017年12月8日にAKB48 は、初の劇場公演から数えて12周年を迎えた。このおめでたい記念公演の席上で前々から燻り続けていた「組閣」が18年春を目途に実施されることが、遂に発表された。「遂に」と云うのはこの間、AKB本店のチーム体制が、続出する卒業者によって半ば崩壊状態にあったからだ。まともに機能しているのはチーム4くらいのもので、チームBに至ってはキャプテン(木アゆりあ)と副キャプテン(大島涼花)双方が不在と云う異常事態に陥っていた。

別培養の純粋AKBの存在感増

 本店チーム制の形骸化が進む一方で、本店中央からは切り離された、いわば別働隊的なチームの存在感が次第次第に増大していた。47都道府県代表から成り、トヨタがメインスポンサーを務めるチーム8、そしてちょうど1年前の16年12月8日にお披露目された16期研究生である。

 AKBは混合させることが大好きなグループだ。組閣などはまさにその面目躍如と云ったところだが、チーム8はトヨタ絡み以外の仕事についても、本店とは切り離された独自の活動を中心に行っており、姉妹グループならぬ姉妹チームの様相を呈していた。チーム8のメンバー3人が本店直属チームに所属してはきたが、それは姉妹グループ在籍者同様の「兼任」扱いなのであった。20歳未満のメンバーが殆どだったこともあるが、チーム8には本店特有の芸能人予備軍臭さや擦れたところがなく、常にパフォーマンスに全力投球する初期の本店の雰囲気を彷彿させるものがあった。度重なる醜聞と全盛期を担ったメンバーの卒業によって本店の人気は続落傾向にあり、乃木坂/欅坂の坂道シリーズに人気や話題が集中してきている。特に清楚で美麗なイメージを植え付けることに成功した乃木坂の成功は、本店側に危機感を抱かせた。と云うのも、大型案件の多くがイメージの悪い本店を嫌って乃木坂へと流れたからである。

 何でもアリのAKBではあるが、そして乃木坂の権利を一部保有しているAKBでもあるが、多少のイメージ改善を図らないことにはビジネスチャンスが広がらない。そこで坂道流の清潔感を出すべく、16期研究生がチーム8に倣って「チーム16期生」のような形で活動を展開していった。通常、研究生はアンダーメンバーとして、正規メンバーである先輩たちに交じって劇場公演に出演して場数を踏み、技量を収得してゆく。ところが16期生はこのような流れには全く乗らずに16期生専用の公演のみに出演し、その他となると僅かに若手メンバー主体の特別公演に出演した程度である。16期生と先輩メンバーとの接触は極端に制限され、劇場公演出演数No.1で「シアターの女神」と評される村山彩希ら、ごく一部のメンバーのみが日常的な接触を持った。村山にしても、或いは親友の岡田奈々にしても、芸能人化していない真面目メンバーであり、16期生は芸能人化した本店中央から事実上隔離されていた。16期生が漸くアンダー出演を果たしたのは、組閣発表の僅か11日前のことだった。

組閣の要点3つ

 そして12月8日、組閣発表の日を迎えたのである。その内容についてだが、大きなトピックスとしては3つあった。一つ目は支店メンバーの本店兼任廃止、二つ目は16期生のチーム入りと半数のメンバーの正規メンバー昇格、三つ目がチーム8メンバー全員の(本店直属)チーム入りである。

 先ず一つ目についてだが、柏木由紀のNGT兼任、岡田奈々のSTU兼任と云った本店主力メンバーによる支店兼任は機能している。ところがその逆、支店メンバーによる本店兼任は有名無実化もいいところだった。劇場公演には碌に出演することなく、シングル選抜にも兼任メンバーだからと云って選ばれるわけではない。全く別の支店メンバーが選ばれるのである。支店トップの山本彩や松井珠理奈が兼任から外れて以来、この支店メンバーによる本店兼任制は殆ど意味の成さないものとなっていた。前の記事で指摘したように、シングル選抜に於ける本店所属メンバーが、支店兼任者を含めると過半数を超えた状態となったくらいしか「利点」を思い出せないほどだ。

 次に二つ目だが、本体から隔離された状態で8が活動を続けたことで、清潔感の他にチームとしての一体感と云うものがメンバー間だけでなく、ファンの間にも醸成された。16期の隔離策もこれに倣ったものだろう。お蔭で一定のファンは付いたが、一歩外を出ればまるで認知されていないような状況でもあった。16期の本体への合流は、16期だけでの活動が限界に差し掛かっていたことを意味するものである。全体として16期のパフォーマンスは一部メンバーを除き、低調さから中々脱しきれなかった。先輩に揉まれて技能向上を図るメリットが、先輩と交友を深める中で芸能人化するリスクを上回ると判断したと云うことだろう。

8が本体に吸収されたのか8が本体を乗っ取ったのか

 それに比べて8の本体への合流は、単なる吸収とは云えない側面がある。本店の中心メンバーは(元祖)神7の揃っていた全盛期を知っているメンバーから、未加入だったり研究生だったりで余り全盛期のことは知らないメンバーへと移行してきている。神7最後の一人・渡辺麻友は卒業し、岡田奈々、向井地美音、高橋朱里、小嶋真子と云った今年度20歳を迎えたメンバーが前面に出てきている。総監督横山の次の代に当たる10期生と云うことでヴェテラン感が漂うところだが、加藤玲奈も同い年となる。それよりも若い年齢と云うことになれば、後藤萌咲のように評価を上げてきているメンバーも居るが、将来のセンター候補、或いはその脇を固められるような存在となると、既存の本店直属メンバーでは候補が殆ど見当たらない。可能性を少しでも感じさせるのはせいぜい、向井地と同じ15期で今年度17歳の福岡聖菜くらいだろうか。その下は未だ14歳の久保怜音になってしまって余りにも未知数に過ぎる。

 ところがここに8メンバーを加えると、本店の将来も何だか明るいもののように感じられるのだ。向井地に代わってすっかり渡辺麻友の後継者の位置付けとなった小栗有以、その小栗よりも総選挙順位では上の倉野尾成美、最近テレビ出演が増える等、急激に伸びてきている長久玲奈、8オリジナルメンバーではないながらも人気を増してきた歌田初夏と云った活きの良い若手が目白押しなのである。本店直属若手の勢いや華やぎの無さを考えると、8抜きでの本店はもはや成立しない状況にあった。

 8に関してはトヨタが後援してきた。したがって8の活動は、トヨタありきのものだ。そのトヨタが撤退するのではないかとの話もまた、以前から燻り続けている。8はパラリンピックに関わっているため、20年の東京五輪までは安泰のようにも思われるが、しかし期限色の強いチームである。このタイミングで8のメンバーを全員、本店本体に取り込んだことで、来るべき組閣体制の間に8が解散する可能性が高いとみることは、寧ろ自然である。今度の組閣発表は今から4年前、14年の「大組閣」以来の大規模な変動を含む体制であるから、4年後までには確実に8が無くなっていることになる。それよりも小規模な組閣を含めると、現体制は15年9月から始まっているから、やはり持って20年度限りと云うところだろうか。

 このトヨタ撤退、8解散の流れを重視するなら8は、路頭に迷う前に本体に救済吸収された形となるのだが、これがまたそう一筋縄ではいかないのだ。それと云うのも8の岡部麟が組閣後の新チームAのキャプテンに就任するからである。

筆頭キャプテン岡部麟

 今回の組閣発表で一番驚いた事柄が、岡部の単なる兼任に止まらないAのキャプテン就任だった。AKBのAを意味するチームAは、本店を代表するチームである。そのAのキャプテンに別働隊8の岡部をいきなり持ってくる人事は、この組閣を象徴する意味合いを持っている。岡部は本店シングル選抜に組閣発表前に初めて選ばれ、組閣発表後にも続けて選ばれている。加えてAのキャプテンになるのだから、本店中央中心の活動にならざるを得ない。これには3つの意味合いが可能性としては考えられる。先ず8が今年度末と云った早い時期に解散すること、次に解散はしないが8の活動量が今後は漸減ないし激減すること、そして本店が今後8出身者を中心に活動を組み立てること、である。

 8の活動が盛んならば、岡部をAのキャプテンに就任させることは中々出来るものではない。キャプテンだからと云って常にチームに帯同していなければならないと云うことはない。Bに至ってはキャプテンも副キャプテンも不在だったことは先述の通りだ。しかしそれは破れかぶれの状態の末の出来事であり、最初から劇場公演やチーム練習に参加しないキャプテンと云うのもないだろう。したがって解散はしないまでも、キャプテンが務まるくらいに8の活動量が低下することを強く示唆するものと云える。また岡部がKでもBでも4でもなく、Aのキャプテンになることが重大な要素なのだ。

 それはAが本店筆頭チームであり、歴代のキャプテンを見ても高橋みなみ・横山由依と云う総監督経験者が務めてきたからである。横山は新チームAに留まり、岡部の後見を務めることになるが、横山もまた嘗てキャプテンを務めていた折には、後見役として高橋みなみが居たものである。一旦横山は高橋から離れてKのキャプテンを務めたが、次期総監督指名後に再びAにキャプテンとして戻り、高橋が卒業するまで傍に居た。

 従来、次期総監督候補としては高橋朱里と岡田奈々の名前が挙がっていた。高橋は先輩からの覚え目出度く、横山からも可愛がられていた。チーム4のキャプテンを務めており、後輩への面倒見に関しても積極的だった。これに対し、ここ1年で急伸を見せたのが岡田だった。12期の高橋に対し岡田は14期、4キャプテンの高橋に対し岡田は副キャプテンと、岡田は高橋よりも格下の存在だ。ところが総選挙順位や握手人気で高橋を上回り、更には新設されたSTUのキャプテンに就任した。これと相前後して岡田は8や支店メンバーとの交友を積極的に行うようになり、その結果少なからず岡田シンパが生まれ、「人脈」の広さはグループ屈指のものとなっていた。

次期総監督候補の行方は

 昨年の総選挙スピーチに於ける発言が運営からの不興を買った等、一本気な高橋に総監督としてまとめられる能力が備わっているのかどうか、不安を覚える向きも無かったわけではない。他方、岡田のSTUキャプテン業は、想像以上の好結果を収めている。しかし井上ヨシマサ公演のセンターに指名されたように、岡田はエース役も務まる。本店エースとして期待された向井地美音が伸び悩む内にここでも岡田は、急追を仕掛けた恰好となっていたわけだ。小栗辺りがエースを務めるようになるまでの間、誰がエース役となるのか考えると…岡田以外の選択肢が余り思い浮かばない。

 そう思っていたところ、1月に発表された51stシングル選抜で岡田がセンターを務めることが明らかになった。これにより次期総監督候補としての岡田の存在は大きく減退した。そして俄然、Aのキャプテンに就任する岡部が次期総監督候補筆頭に躍進した印象を抱かせるものとなった。

 次期総監督レースの行方を担う岡部と高橋が共に茨城出身で、加えてその茨城には行方(なめがた)と云う地名があるところがまた面白いのだが、高橋はいわゆる茨城のヤンキー的イメージに合致するところもあるキャラなのに対し、岡部は8らしくお嬢様的な感じのするところがある。しっかりしているのは間違いなく岡部の方だろう。岡部の握手人気は8の中では小栗・倉野尾に次ぐ3番手で、高橋を上回る。しかし2回連続で総選挙選抜メンバーとなった高橋に対して岡部は、ランクインすらしたことがない。高橋みなみも横山も総選挙では選抜入りしてきた。したがって次期総監督候補としての岡部に足りないものの第一は総選挙順位と云うことになるのだが、仮に今年で総選挙が終わるのなら、それも関係ないことになる。

 小栗・倉野尾ら8出身者が本店の中核を占めるのであれば、岡部が総監督となるのは自然な流れである。また実績の乏しい岡部を納得感ある形で総監督にするために、小栗・倉野尾らの中核化を急ぐと云う逆流現象も起きるかもしれない。それは運営が一メンバーとしては高橋を評価していても、リーダーとしての高橋については余り信用していないように見受けられるからである。岡田がエースとなることで総監督候補から外れるなら、現状高橋以外に担い手は居なくなる。そこで8の中でも年長者でしっかりしていて融通の利きやすい関東メンバーでもある岡部を強引に本店筆頭にぶち込んできたのだろうと見る。

第5話 おわりに

 8の本店直属メンバー化と岡部のキャプテン就任は、界隈に大きな衝撃を与えた。8が本店中央の一部となることは、外観的にはあたかも吸収合併されたかのような感じにも見えるが、内実は寧ろ8が本店中央の骨肉となることを意味しているように感じられる。それが岡部のキャプテン就任であり、小栗のまゆゆ後継指名だったように思うのだ。

 AKBは今、勝負の時を迎えている。最後の神7メンバーの渡辺が抜けて、本店大物メンバーは柏木くらいになった。グループ全体を見渡しても指原莉乃、それに山本彩くらいのもので、松井珠理奈の一般浸透度はやや物足りなく、宮脇咲良に至っては全然足りない状況である。その宮脇の他、岡田、向井地、高橋、加藤、それに支店の白間美瑠、中井りか、瀧野由美子と云った面々を擁する今年度20歳を迎えた世代が最後の、ヴォリューム感ある世代となる。この世代がどこまで全盛期に近いムーヴメントを形作れるか。AKBグループの今後を見据えるなら、非常に大事な要素となる。


AKB乃坂道 表紙
uploaded 2018.0203 by 山田系太楼どつとこむ
©山田系太楼 Yamada*K*taro